実践編
第6回最終回
コールセンターの成果は、現場を統括するセンター長やマネージャーのあり方によって大きく左右されます。SVやオペレータのパフォーマンスを最大限に引き出し、センターをどう導くべきか、日々悩んでいる方も多いのではないでしょうか。組織をもっとよくしたいと思っている管理者へ向け、今回は組織のトップが実践すべき取り組みや、求められる姿勢について解説します。
コールセンターのパフォーマンスは、センター長やマネージャーといった組織のトップのあり方で100%決まります。言わずもがなですが、責任重大です。では、高い成果を出しているセンター長・マネージャーは、どのようなことをしているのでしょうか。基本となるポイントを3つ紹介します。

1つ目は、センターの理念・方針を示すことです。ミッション・ビジョン・バリューやクレド、スローガンなど呼び方はさまざまありますが、センター全体で一貫性を持って改善を行うには、組織が目指すべき姿を明確にすることが不可欠です。まだこうしたものが定まっていないというセンターは、グループワークや投票など、所属している全員が参加できる形で作ってみることをおすすめします。
理念・方針が決まったら、今度はそれを実現できるよう、日々の業務に落とし込みましょう。例えば「お客さまにフレンドリーなコールセンター」という理念を掲げた場合であれば、「電話応対をする際、一方的に話さない」「お客様の話をさえぎらず、最後まで聞く」といった具合に、行動レベルでやるべきことを明らかにします。
私がコンサルティングをしているセンターでも理念の作成を指導することがありますが、管理側と現場の視点がそろい、それだけでオペレータやSVから不満が出なくなったケースもあります。
2つ目は、日々のセンター運営を多面的に点検し、問題を解決することです。センター運営では、さまざまな課題が出てきます。応答率、苦情やミスの発生状況、欠勤率の上昇、離職などなど……。責任者はそれらに対し、即時の対応とリスク管理が求められます。SVなどの現場管理者の協力を得ながら、一つひとつの問題にPDCAを回して、要因分析と改善施策を地道に繰り返していきます。
私もコールセンターのBPO企業に所属していた際、30以上のセンター、4000人以上のスタッフが在籍する拠点の責任者を務めていました。当時、その拠点では苦情や不正が毎日起きており、立て直しのために任命されたのでした。就任1年目は、トラブルの対応に追われ続けていたことを覚えています。マニュアルの整備や仕組みの改善など、原因ごとに対策を打ち、効果測定を続けました。さらに、根本解決には教育体制の整備が必要だと考え、管理職やSVの育成、電話の基礎研修などを徹底。こうして改善に明け暮れて5年が経過した頃、ようやくトラブルはほとんど起きなくなり、組織の一人ひとりが自主的に動けるようになっていました。
コールセンターは、問題の原因特定と解決の連続です。センター運営が安定した状態になるまでトップが周囲を引っ張り、丁寧に組織と人を整えていきましょう。
3つ目は、教育への投資です。2つ目の話にもつながりますが、コールセンターで起きる問題の解決には、研修体制をきちんと整えることが不可欠です。部下が学ぶための場と時間を作ることも、センター長やマネージャーの大切な責務だといえます。
教育の重要性を理解している外資系や業界トップクラスの企業は、研修プログラムが充実している傾向にあります。ある大手の損保会社では、初級・中級・上級とスキル別にオペレータのカリキュラムを用意しているほか、ヨガやメンタルケアの講師を招くなど心身のサポートにも力を入れていました。人材育成にしっかりと投資をしているため離職率も低く、高いモチベーションで業務に取り組めます。
すべてのセンターでここまで研修プログラムを充実させるのは難しいですが、最近では「BIZTEL shouin」などのコールセンターに特化したeラーニングもあり、手軽に教育環境を整えられるようになりました。正しい敬語やクッション言葉、ご高齢のお客さまを案内する際のポイントといったオペレータ向けの研修はもちろん、クレーム対応・KPI管理・カスハラ対策などのSVや管理職向けの講座も学習できます。こうした外部にある手法や知恵もぜひ有効活用してみましょう。
反対に、絶対にやってはいけないセンター長・マネージャーの振る舞いについてもお伝えします。1つ目は、責任を取らないことです。自分がリスクを負わないために決断しなかったり、言い訳ばかりする姿を見せるのは、組織のリーダーとして適切ではありません。2つ目は、トラブルがあった際、すべての責任を個人に押し付けることです。たとえ個人がしたミスであっても、業務フローや仕組みの中に必ず要因があります。応急処置だけでなく、長期視野で抜本的な対策を行うことが必要です。
センターをよりよい職場に変えられるか、社内での価値を向上できるかは、組織を束ねるトップの腕次第。みなさんの日々の挑戦と進化を、心から応援しています。