コラム
第151回
企業が設ける優良顧客ランクの達成条件への顧客の取り組みはしばしば「修行」と呼ばれ、その条件をクリアするために顧客はさまざまな努力を強いられます。クレジットカードであれば1年間にいくら以上使えば以後の年会費が無料なったり、より高いグレードのカードランクに申し込めたりします。また、航空会社では1年間に規定ポイント以上取得したら、以後、仮にエコノミークラスに乗っても、荷物の重量の条件が引き上げられたり、手荷物がターンテーブルから早くでてきたり、空港ラウンジが利用できたりと、さまざまな特典が得られます。
私は今年たまたま、海外出張や家族旅行などで航空機利用が多かったので、あと数千ポイントで永久資格が得られるところまで来ました。ただし、今年はもう対象の航空会社に乗る予定がないので、先日休みを取って日帰りで羽田空港・石垣空港間を往復し獲得条件を達成しました。石垣島での滞在時間はわずか4時間なので、駅前のタクシーに乗って島を案内してもらいました。運転手さんに事情を話すと、石垣は東京から遠いので、航空会社の条件達成のために来る顧客が多いとか。また、私の興味のあることを聞き出し、約3時間で観光案内には載っていない、いくつかの魅力的な穴場に連れて行ってくれました。観光客対応には慣れており、あまり期待していなかった待ち時間が有意義な時間となり、非常に感動しました。YouTubeを見ると「〇〇修行」というタイトルで効率的なポイントの貯め方が紹介されており、沖縄やマレーシアの間を旅行目的ではなく航空会社のステータス獲得のために往復していることが分かります。
近年、企業が顧客を自社の経済圏に囲い込むために、顧客に要求する条件は年々複雑化しています。その条件を理解できる人とできない人では、支払う金額や受けられるサービスも大きく異なるので、少しでもお金を節約したいとか、良いサービスを受けたいとか、考える消費者の負荷は少なくありません。
達成条件の変更も頻繁に行われ、突然、企業からメールやWebサイトなどで通知され、対応しないといきなり特典を受けられなくなります。このような通知は読んでも理解できないことが多いので、結局、有人サポートに問い合わせる機会も増えています。
先日も、利用する証券会社とクレジットカード会社との特典条件が変更され、突然、いままで受けられていた特典が反映されなくなりました。証券会社のサポートセンターに連絡すると、丁寧に達成条件の変更について教えてもらえ、次月からまた特典が得られるように契約を変更してくれました。サポートセンターの方の分かりやすい説明を受けて初めて、事前通知の内容を私が誤解していたことが分かりました。ここまで複雑な内容となると、どのように通知方法を工夫してもセルフヘルプで自己解決できないことが発生すると思います。複雑な内容に対応できるサポートセンターは今後も必須だと感じました。