CCaaSソリューション「Genesys Cloud CX」を展開するジェネシスクラウドサービス(東京都港区、ポール・伊藤・リッチー社長)は2024年7月、ユーザー企業向けイベント「Xperience Tokyo 2024」を開催した。今回のテーマは「AIが加速するCXの未来」。生成AIが台頭して以降、企業はCX戦略を抜本的にどう再構築すべきか議論した。
オープニングセッションは「Your Future Accelerated ~AIが加速するCXの未来」というテーマで、ジェネシスクラウドサービス 代表取締役社長のポール・伊藤・リッチー氏がイベントの趣旨を説明したうえで、直近の取り組みについて紹介。米Genesys社は2024年2月にソーシャル・デジタルデータ分析企業のRadarr Technologies社を買収したほか、CRMベンダーのSalesforce社およびService Now社のパートナーシップの強化、AWS大阪リージョンの利用開始を進めている。事業拡大に向け、従業員を2割程増員した経緯についても言及した。
さらに、「2030年に向けたCX戦略ロードマップ」を掲げ、参加者に向けて「CXをレベルアップしていくために何が一番重要であるか」という質問を提示し、CXの運用レベルを以下の6段階で説明した。
(資料提供:ジェネシスクラウドサービス)
レベル0「ゼロ・オーケストレーション」
・オペレータが全ての問い合わせに対応
・一貫したサービスを提供するためには訓練と人の専門知識に依存
レベル1「メニューに基づくナビゲーション」
・IVRによるナビゲーションとシンプルなインタラクションのメニューベースの自動化
・使用例「認証」「アカウント検索」「アクティベーションアンケート」「オプトイン/アウト」など
・残りのすべてのやり取りをオペレータにルーティング
レベル2「事前に定義した会話の自動対応」
・ボットによる定型的な事前定義した会話は自然言語によって自動対応
・使用例「注文の作成/キャンセル」「スケジューリング」「返品」「住所変更スケジューリング」「返品」「住所変更」「パスワードリセット」など
・オペレータは、事前に定義されたワークフローに基づいて、いつでもアシストやプロンプトを受けることが可能
レベル3「システムが会話を生成」
・顧客や従業員のコンテキストに基づき、ネクスト・ベスト・アクションを伴う多くのユースケースに対応した会話をシステムが生成
・バーチャルエージェントは、「商品の問い合わせ」「アップ/クロスセル」「トラブルシューティング」「複数ステップの承認」などのユースケースに対応可能。
・微妙なニュアンスや複雑なユースケースの場合、コパイロットがオペレータへのシームレスな移行を可能にし、オペレータの効率と効果を高める
レベル4「システムによる共感体験の生成」
・「請求書に関する問い合わせ」「保証範囲の確認」「クレーム処理」のような複雑な問い合わせや問題解決を含む、ほとんどのユースケースにおいて共感的な体験を生み出す
・人間は、感情的な認識を持つコパイロットにサポートされながら、非常に複雑、もしくは感情的なやり取りのみに対応する。
レベル5「ユニバーサルオーケストレーション」
・交渉や議論、クレーム、コンサルティング・セールスを含む、あらゆるユースケースにおいて自律的な体験を生成
・顧客の個別要求を予測し対応。人間のようなバーチャル・パーソナル・コンシェルジュを通じて対話。
・オペレータは関与せず、ナレッジワーカーが直接関与し、例外的に発生する対応を処理する。
ポール・伊藤・リッチー氏は、「レベル0から1への移行には50年程かかりましたが、レベル1から2に20年、レベル2から3に10年といった具合に短縮されています。顧客体験の変化が急速に進んでいるため、2030年までに『自律対応ボットの台頭』というレベル5まで到達するでしょう」と解説。「とくに採用が難しくなっている昨今、消費者の要望がデジタル化とともに変化しつつあり、いかに生成AIを駆使していくかが今後のポイントとなるはずです」(ポール・伊藤・リッチー氏)
ジェネシスクラウドサービス 代表取締役社長のポール・伊藤・リッチー氏
続いて、プロダクト・マネジメント担当シニアバイスプレジデントのElcenora Martinez氏が今後の製品展開について説明。Martinez氏はCXとAIの未来について述べ、オペレータに匹敵する対応が可能なプロダクト「Genesys Agent Copilot」について紹介した。「将来的には、AIボットが顧客の意味理解までできるほど発達し、これまで以上に“人間らしい”やり取りを実現できるでしょう」と期待を述べた。
SVP Product Management, Analytics & Journey Managementの
Elcenora Martinez氏
講演では、プラチナ・スポンサー・セッションとして、「生成AI活用の鍵は顧客データ」というテーマの下、セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマーケティングマネージャーの三宮健太氏が登壇。Genesys Cloud CXと相互連携可能なCRMシステム「Salesforce Service Cloud」内の生成AI「Einstein」に関するデモンストレーションを実演。Einsteinがリアルタイムで応対内容を把握したうえで、内容の要約や顧客データを自動で更新できると説明。三宮氏は、「有人チャットやメッセージングサービスといった非同期型対話チャネルの普及に伴い、顧客接点の位置付けも大きく変化しました。AIとの連携については、活用戦略やデータの収集・最適化がもっとも重要です。お客様との関係性を強化する手段として、ツールを活用していただきたい」と訴求した。
セールスフォース・ジャパン
プロダクトマーケティングマネージャーの三宮健太氏
講演セッションのほかにも、定員10名のラウンドテーブル・セッションの開催や、各種ベンダーによる展示デモブースが設置された。同イベントには数多くの企業担当者が足を運び、登壇者の発言に熱心に耳を傾けた。