コールセンター向け「Well-being診断」
──プロシード
従業員の定着やパフォーマンス向上のためには、従業員1人ひとりの心身の健康や貢献できている実感──つまり『Well-being』が重要になる。プロシードは2023年、約1万名の従業員アンケートを実施。調査結果を基に国内センターのWell-beingについて、現状と課題をみる。
従来、多くの企業が、『ヒト』をコストや労働力の供給という観点から、即時かつ効率的に“活用”しようとしてきた。労働集約的な産業であるコールセンターも例外ではない。
基本的にマネジメントは、労働法の遵守や福利厚生管理など人事管理の側面が重視され、“働きやすさ”“働きがい”については個人が自ら追求し、企業がそこに働きかけることはほとんどなかった。しかし、事業の持続可能性という点でみると、従来のやり方には課題がある。企業は、ヒトを組織の重要な「投資対象」と捉え、育成することが重要になっており、従業員の経験やスキルを経営の重要な要素の一つとして戦略的に活用、長期的に価値を“共に創造する”パートナーとして従業員との健全な関係を築く傾向が強まりつつある。
コンタクトセンター認定事業を展開するプロシードは、2021年から独自の「Well-being診断」という従業員アンケート調査を実施。アンケート結果をもとに、国内で最も幸福度の高いセンターを決める『Well-being CUSTOMER CENTER AWARD 2023』を開催、表彰している。
アンケートは、(1)幸福度、(2)幸福の感じ方、(3)幸福度を向上させる7つの要素の3つの設問グループで構成。
(1)幸福度は、「あなたの人生の幸福度に今の職場や仕事で過ごす時間は良い影響を与えていますか?」という設問に対して、0〜10の11段階で回答。2023年の平均値は、5.66だった(図1)。これは、国連機関であるSDSNが毎年実施・発表している「World Happiness Report 2023」の日本の結果(6.129)よりも低い。集計方法が異なるものの、単純比較すると、「センターの幸福度は日本の中でも相対的に低い」といえるだろう。
(2)幸福の感じ方は、7つの設問(「仕事の継続意欲」「働きがい」「人や社会への貢献実感」「チームワーク・チームスピリット」「会社への思い入れ」「心身の健康」「商品・サービスへの誇り」)の回答結果をもとに集計している。そのうち、「仕事の継続意欲」と「働きがい」に関する回答結果を図2に示す。
働きがいに対するポジティブな回答の割合は、全体で27%にとどまったが、継続意欲に関してポジティブ(7段階のTOP2)な回答をした人の約半数が、働きがいについてポジティブな回答だった。この結果から、継続意欲と働きがいには明かな相関関係があることがわかる。
この2つの回答の相関から、「働き続けたいが働きがいは感じていない」という従業員がいることにも着目したい。継続意欲についてはポジティブな回答者のうち、約半数は、働きがいについてポジティブではない。こうした従業員は、十分にパフォーマンスを発揮できるだろうか。
パフォーマンスを十分に発揮できない従業員が増えることは、企業にとってリスクになる。そうした従業員を、「アブセンティーズム」と「プレゼンティーズム」に分類してアプローチする考え方がある。アブセンティーズムとは、従業員が欠勤して業務に就くことができていない状態を指す。欠勤率や離職率など、従来からセンターでも重視されている指標で表せる。一方、プレゼンティーズムは、働いてはいるものの心身の不調のため生産性が低下している状態で、把握や数値化が難しい。今回の調査から見えた「働き続けたいが働きがいは感じていない」という状態は、プレゼンティーズムの兆候をつかむひとつの指標として注目したい。