小田原の観光客に彩りを添える
“プロフェッショナル”ガイドのおもてなし
江戸時代には「宿場町」、明治期は政財界人や文化人たちの「別荘地」として栄えた小田原市。豊かな自然と長い歴史、伝統・文化が多く点在する町の魅力を観光客に伝えるのが、「小田原ガイド協会」だ。小田原地区や近郊エリアの史跡・見どころを案内するガイド集団で、平均年齢は約75歳。定年後に応募するケースが多いが、誰もがすぐにガイドになれるわけではない。小田原市の歴史・自然・文化や心構えを1年かけて座学と実習で学び、仮免許試験に合格してはじめてガイドに同行でき、最終的に100問の本番筆記試験に合格して独り立ちできる仕組みだ。
同法人 副会長の勝俣宏一さんは「もちろんガイドデビューしてからも、みんなが常に学びの姿勢です。お客様に聞かれて答えられない、わからないという経験は本人が何より辛い。そうならないようガイドのルートは最低3回はまわり、予習を重ねて本番のガイドを迎えます」と話す。学生時代よりはるかに膨大な量の勉強が必要で、大半のガイドは図書館に通っているという。
協会からも学ぶ環境を提供しており、定期的に「ガイド員研修会」を開催し、情報をアップデートする。直近では小田原城内の植物、地形の識者をそれぞれ招いて半日勉強会を開催した。
膨大な勉強量を可能にする
お客様の笑顔と感謝の声
膨大な学習量をボランティアでこなせる理由について、土井正代さんは「お客様に喜んでいただくこと自体がガイドの皆さんの生きがいになっていることが大きいと思います。私自身、このお仕事のおかげで楽しい一日を送ることができています」と話す。
勝俣さんも「お客様に楽しんでいただくのはもちろんですが、ガイドになってくださった皆さんにも毎日の生きがいにして、楽しんで参加してほしい。“学生時代より勉強してる”と笑う方が大半ですが、そんな苦労もお客様の笑顔がすべてを吹き飛ばしてくれる。お客様の喜ぶ声、感謝の言葉、嬉しそうな反応、これらに少しでも多く、ガイドの皆さんにふれていただくことがモチベーションに直結しているのだと思います」と話す。顧客に直接対峙するサービス業の“やりがい”を享受する。そのうえで欠かせないのが、“指示”で動いてもらうのではないということ。
「当団体でもっとも大切にしているのは、スタッフの自発性と協力体制です。誰かの指示で動くだけでは、ガイドの醍醐味は得られにくい。企画に関しても、研修会に関しても、それぞれのスタッフの関心ややりたいことを実現できることを大切にしています」(勝俣さん)と説明する。