<編集部コラム>退職者予防に限界?! 「コールセンターで働く価値」訴求の必要性

人手不足、採用難。ほとんどのコールセンター運営企業がアタマを悩ませているこの課題に対する最大の対策は「既存スタッフの離職予防」だ。

「コールセンター実態調査」では、「採用難に対する対策」という設問に対し、全体の68.8%が「既存スタッフが退職しないようにモチベーション管理に気を配っている」と回答している(右グラフ)。具体的な施策を聞くと、「すでに実施していること」は、「表彰制度」「業務に対する評価とフィードバック強化」「イベントの実施」が上位3項目となっている。「これから実施したいこと」は、「人材教育プログラムの強化」「キャリア支援制度の充実や強化」が上位2項目だが、実は「無回答」が最も多い。今後の施策を模索、あるいは決めかねている運営企業が多いようだ。

これらの施策は、同じように非正規社員を主な労働力と捉えている流通・小売り、外食産業などではすでに取り組んでいる大手企業が多い。地域社員制度を採用したIKEAやファーストリテイリンググループなどが有名だが、一定の成果を挙げているという報道もある。コールセンターは、こうした異業種とも人材確保において競争環境にさらされている。もちろん、一般事務職とも同様で、大手人材派遣各社の担当者は、「多少、コールセンターが時給が高くても『事務職がいい』と(コールセンターには)行きたがらない派遣スタッフが多い」と口を揃える。

コールセンターは、決して人気のある職種ではない。苦情対応など「顔の見えない顧客」に対応するストレスフルな職場であるうえに、「非正規社員の職場」、つまりキャリアアップできない環境というイメージが強い。つまり、「安定性に欠ける」という見方をされており、現実にあてはまる側面も大きいのも事実だ。


それは主婦やフリーターなどに対する「柔軟な働き方が可能」という長所の裏返しでもあるわけだが、これからの人材マネジメントは労働者に“選択肢”を提供することが求められる。例えば、(1)一般のビジネスパーソン同様のキャリアアップ、(2)コールセンターのスペシャリストとしての成長、(3)オペレータとしてのスキルアップ――というモデルのどれでも選択できるという環境だ(右図)。

コールセンターにつきまとう不人気職種というイメージは、ストレスフルな業務内容そのものに起因しているだけではない。スーパーバイザーを対象とした調査でも、「将来性に不安」が多数を占めるように、「キャリア構築できない」というイメージ、あるいは事実も大きな原因となっている。これは、社会に対し「コールセンターで働くことの価値」を訴求してこなかった業界全体の責任でもある。コールセンターは、その会社のサービスや製品に関する情報が集まり、利用している顧客の声を直接聞くことのできる部門。人材育成部門としての価値(とくにエントリージョブとしての価値)をこれまで以上に訴求することが、その手段のひとつと考えられる。

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年10月03日 16時23分 更新

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