2018年2月号 <Focus/ソリューション>

Focus

教師データ不足、教育プロセス
AIチャットボットの2大課題に挑む

導入が進むチャットボット。しかし、事例各社のサービスを試すと、「正答率」が課題であることは一目瞭然だ。背景には、AIに対する教師データ不足、教育プロセスの最適化という2つの課題がある。さまざまな提案を行うITベンダー各社だが、富士通も新ブランド「CHORDSHIP」で課題への回答を示した。

 コールセンターにおけるAI活用で最も大きな壁となっているのは、「教師データ」の不足だ。とくにAIブームをけん引するディープラーニング技術を活用するには、膨大な教師データが必要となる。チャットボットにせよ、オペレータの業務支援にせよ、コールセンターに蓄積されているFAQ程度では、高精度のナレッジ検索と表示は不可能に近い。

 大手ベンダー各社はさまざまなアプローチを実施しているが、富士通は「ルールベース+機械学習」のハイブリッド型のAIを基盤としたソリューション「CHORDSHIP(コードシップ)」を開発。少ないFAQでも高精度の対応ができる点を訴求している。


Interview

今田 和雄 氏

AI最大の課題、“不足する教師データ”に
「CHORDSHIP」で回答を提示

富士通 執行役員 グローバルサービスインテグレーション部門 デジタルフロントビジネスグループ 副グループ長
今田 和雄 氏

コールセンターにおけるAIチャットボット活用は、プロセス、成果ともにまだ課題が多く残されている。富士通は、その回答のひとつとして新しいソリューション「CHORDSHIP」を開発。すでに数社に導入され、成果も出しつつある。CHORDSHIPの陣頭指揮を執る執行役員の今田和雄氏は、「企業と顧客の新しいコミュニケーション・チャネルによって、“絆作り”を支援する」と意気込む。

──チャットボットが流行しつつある背景をどう捉えていますか。

今田 消費者のコミュニケーション手段が変わってきています。とくに若い方には「電話すること」という行為そのものが障壁。企業にとって、「もしもし、はいはい」のルールを知らない世代との接点が必要なことが認識されつつあるということではないでしょうか。

──さまざまなベンダーがソリューションを開発し、ユーザー企業も増えていますが、課題も多いようです。

今田 チャットボットの運用には、精度の高いナレッジデータが大量に必要とされています。しかし、コールセンターの現場は忙しすぎて、ナレッジを精査することが難しいのが現状です。VOC(顧客の声)を記録している企業は多くても、ほとんどは表現が「オペレータの方の声」に書き換えられています。それをAIに取り込んでも、いざ顧客が使ってみると正しい回答に導くことができないことが多いのです。そこで、「最小限のデータで正解を出すAI」を実現すべく開発したのが、「CHORDSHIP」です。

 チャットボット構築で大きな課題とされている対話のデザインは、ルールベースで絞り込むことでさほど多くのFAQデータがなくても回答に導くフローを構築します。言葉のゆらぎは、あらかじめ用意している同義語・類義語辞書を機械学習で強化することで高い正答率を実現できることが、テストで実証されています。

──電話主体のコールセンターでよかった時代と比べると、ITベンダーにとっては導入だけでなくAIの教育など、メンテナンスやフォローアップにも相当の手間を要するように見えます。

今田 従来のRFPありきのビジネスではなく、クライアントの皆様と“共創”する時代に入ったと感じます。AIは、その典型的なソリューションといえるでしょう。結果的に、ITの提案には、従来の情報システム部門に対してだけでなく、現場、経営、企画部門の皆様に対しても必要で、従来とは違った組織形態が求められています。デジタルフロントビジネスグループでは、SE、ミドルウエア技術者、営業で組織したデジタルイノベーター部隊を作りました。これは、テーマ発見、絞り込みからアイデア出し、サービス実装までを短期間で実現するプロフェッショナル部門です。CHORDSHIPの開発や実装も彼らが中心に行っています。

──CHORDSHIPの強化方針は。

今田 機能面では、なるべく早い段階で音声認識を実装したいと思っています。さらに、アナリティクス機能の強化は、すでに一部のクライアント様の協力を得て、ダッシュボード表示を試行中です。また、多言語対応も予定しています。

 CHORDSHIPは、単なるチャットボットではなく、クラウドソリューションのプラットフォームとして育てる方針です。具体的にはAPIを公開してエコシステム化を促進し、自社だけではなくパートナーを含めて、技術のインテグレーションで新たな価値を共創していきたいと考えています。