2017年10月号 <インタビュー>

柴田 秋雄 氏

倒産寸前のホテルを救った
「日本一幸せな従業員を作る」人間教育

アソシア志友館 理事長
ホテルアソシア名古屋ターミナル
元代表取締役専務総支配人
柴田 秋雄 氏

名古屋駅前に立っていた「ホテルアソシア名古屋ターミナル」(現在はターミナルビル建て替えのため閉館)。かつて倒産寸前まで追い込まれた同ホテルを7期連続の黒字、90%を超える稼働率にまで再生した元総支配人の柴田秋雄氏は、「従業員の幸せ」を優先した数々の施策を実行。その道程を聞いた。

Profile

柴田 秋雄 氏(Akio Shibata)

アソシア志友館 理事長
ホテルアソシア名古屋ターミナル 元代表取締役専務総支配人

1961年国鉄入社。鉄道労働組合の役員や事務局長を務め、1994年にホテルアソシア名古屋ターミナルに転籍。総務部担当部長や総支配人を務める。総支配人就任後、4期赤字だったホテルを7期連続黒字に再生した。

──「従業員満足度を高める」というミッションを掲げる企業は多くありますが、なかなか実現できないのが実状です。

柴田 「(経営者が)どれだけ本気で従業員の幸せを一番に考えているか」、これに尽きます。私の経験上、従業員の満足を高めることは難しいことではありません。これを実現できれば、顧客満足も離職率低下も、売上向上も後から必ずついてくるはずです。

100名の人員整理を担い
実行したのは“人間教育”

──かつて、高いホスピタリティで知られていた「ホテルアソシア名古屋ターミナル」でのご経験を聞かせてください。

柴田 私は国鉄の労働組合の委員長を長く務めていましたが、当時グループ会社となった負債数億円を抱えて倒産寸前の同ホテルに赴任しました。

 そのときの任務は、およそ150名在籍していたスタッフの3分の2にあたる100名の人員整理です。それまで労働組合で尽力してきた「雇用を守る側」とは正反対の立場になりました。

 はじめに私が決めたのは「失職者をひとりも出さない」「能力の優劣で引き留めや転籍推奨の区別をしない」ということでした。国鉄での人脈にもお世話になり、100名の再就職先を準備できました。条件面でも、給与を下げないことはもちろん、将来のチャンスが広がるような国内トップクラスのホテルや大手百貨店なども多くありました。

 ところが、従業員に転籍の話を伝えたところ、希望者はわずか5名。従業員の士気はまったく上がらなかったのです。

──なぜでしょうか。

柴田 経営悪化の影響で、自分たちのサービス力に自信をなくし、「小さなホテルでの経験しかない自分が、別の環境でやっていけるのか」という不安を抱えていたのです。

 そこではじめたのが、「人間教育」です。一般的な「従業員教育」は、接客や営業のスキルアップが中心です。しかし、人は生きる意味や喜びを感じられなければ、自信もやる気も持てません。モチベーションが高まって、はじめてスキルを学ぶ意欲が出てくるものです。

──具体的な研修内容は。

柴田 東京の椿山荘やパークハイアットホテル、帝国ホテルなど日本で一流と言われるホテルを見学させてもらい、実際に働く人を見て、その雰囲気や接客を体験したのです。

(聞き手・嶋崎有希子)
続きは本誌をご覧ください