2017年5月号 <特集>

特集扉

辞めない人材の『体験』を紐解く
“EX(従業員体験)”の研究

Part.1 <提言>

「満足度」ではなく「働きがい」を測る
“eNPS”実践のすすめ

「CS(顧客満足)はES(従業員満足)から」と言われ、その因果関係は誰もが理解しつつも、ES施策は後回しにされがちだ。だが、採用難を背景に、ES向上が改めて注目を集めている。従来のようなES調査をベースとした取り組みではなく、職場へのロイヤルティを測る「eNPS(エンプロイー ネット・プロモーター・スコア)」を軸にEX(従業員体験価値)を高める方法を検証する。

 従来のES調査では、不満を聞き出すことはできても、将来も働き続ける理由や、離職を左右すると言われる「会社(職場)に対するロイヤルティ」を把握するまでには至らない。そこで注目したいのが、従業員1人ひとりの「従業員体験(エンプロイー・エクスペリエンス:EX)」を紐解き、どういった体験が仕事への意欲や継続意向を引き出し、職場へのロイヤルティを高めるのかを見極めるという考え方だ。

 EXを測る指標のひとつに、会社/職場へのロイヤルティを示すeNPS(エンプロイー ネット・プロモーター・スコア)がある。「この仕事(職場)を知人・友人に勧めますか」という問いに0〜10の11段階で回答させるというもので、0〜6を批判者、9〜10を推奨者とし、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたスコアを算出する。良い体験をした従業員はその仕事を他者にも勧めたいと思う割合が増えるため、「eNPSが高くなればEXが改善された」という証明になる。EXを基軸とした改善サイクルの回し方を解説する。

図1 eNPSの概要

図1 eNPSの概要

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Part.2 <調査>

職場としての推奨スコア「-62.7」!
不満要因は「給与」と「教育体制」に集中

コールセンターで現在、働いている人たちは、いかなる「体験」をし、どの程度のロイヤルティを感じているのか。現状と課題を抽出すべく、実態調査を行った。結果、従業員の職場に対するロイヤルティを示すeNPSは-62.7を記録。266人の回答結果から、コールセンターの仕事に対する“やりがいポイント”と“不快ポイント”を検証する。

 コールセンターの従事者が、職場でいかなる経験をし、どの程度のロイヤルティを感じているのか。コールセンタージャパン編集部では、インターネットリサーチおよびメールによる調査票で広くアンケートを実施した(実施時期は2017年3月中旬、有効回答数は266人)。

 設問は、雇用形態、勤続年数などの基礎情報と、「働いてよかったと思った体験の有無とその内容」「不快な体験とその内容」「給与、教育、人間関係、設備などへの思い」、さらに「職場として知人や友人に奨められるか」という“eNPS”、「自社の製品やサービスを知人や友人に奨められるか」という“NPS”など。

 結果、属している組織や会社へのロイヤルティを測るeNPSは、全体で「マイナス62.7」。オペレータ層に限っては「マイナス73.7」に達している。デトラクター(0〜6をつけた回答者)に聞いた理由は、「向き不向きが大きい」「ストレスが大きい」などが大半を占めた。ただ、NPSにおけるプロモーター(9〜10をつけた回答者)に限れば、eNPSは「マイナス2.6」と、かなり高いロイヤルティを示している。「会社や製品、サービスのファンになる/する」ことは、職場としてのロイヤルティも高めることが明らかとなったといえそうだ。

図2 eNPSについて

図2 eNPSについて

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Part.3 <座談会>

アルバイトもベテラン社員も同じ!
定着・育成には「成長実感」が必要

コールセンターはダイバシティな職場で、構成するオペレータの属性もさまざまだ。若いアルバイトが中心のセンター(スターフェスティバル)と経験値の高い社員も多いセンター(DHLジャパン)のマネジメント層に、自身およびメンバーのEXについて議論してもらった。共通するキーワードは仕事に対する納得と、「成長実感」だ。

 コールセンターでマネジメントに携わっている、DHLジャパンの河口朱美氏、スターフェスティバルの大島庸子氏に、自身のEX(従業員体験)および部下のEXの捉え方や高め方について聞いた。聞き手は、さまざまな外資系企業でセンター長を歴任した後、独立しコールセンターを対象にした講演・研修を行うカルディアクロスの和泉祐子氏。

 河口氏は、マネジメントにステップアップしたとき、自身が掲げる理想と現実のギャップに苦しんだ経験を語り、大島氏もチャレンジ精神の豊富さゆえ「やらない」という選択肢がなくバーンアウトしかけた経緯を話した。仕事のやりがいも苦しさも知る2人は、現在、マネジメントとして部下のEX向上を模索する。大島氏は、部下が仕事の価値を感じられるようミッションを明確にして1人ひとりの目標を設定し、小さな成功体験を積み上げることで成長を実感させるリーダシップを発揮したマネジメントを実践。一方、河口氏は、部下の強みを引き出すよう声をかけ後押しをするサポート型マネジメントで、チームのパフォーマンスを引き上げている。

座談会

出席者(順不同)

河口 朱美 氏(右)
 DHLジャパン
 カスタマーサービス本部 CSディベロップメント マネージャー

大島 庸子 氏(中)
 スターフェスティバル
 ごちクル事業部カスタマーサービス部 コールセンター統括

司会

和泉 祐子 氏(左)
 カルディアクロス 代表