【トレンド】RPAソリューション

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[トレンド]RPAソリューション

コールセンターで活用できる「ロボット」
成否分ける“現場主導のシナリオ設計”

労働人口不足の切り札として注目されるRPA(Robotic Process Automation)。対応ツールがさまざまなベンダーからリリースされているが、完全自動・半自動、PCインストール型・サーバー型など、多様なタイプが存在する。主要ソリューションの機能を紹介するとともに、BPOサービスベンダーのRPAへの取り組みを追う。

 RPAとは、現状では「人間に変わって大量の定型業務を自動処理するソフトウエアロボット」を指す。将来的には、ルールエンジンやAI、機械学習などを含む認知技術を活用して、非定型業務まで処理できるとされるが、まだしばらく時間がかかりそうだ。

 すでにRPAツールは多くの種類がリリースされている。システム構成は大きく2つあり、PCクライアントにインストールして単独で稼働するものと、サーバーにセットアップして仮想クライアントで稼働するものがある。前者は導入費用は手頃だが、大量処理は難しい面もある。後者は処理能力は高いがロボットの構築(シナリオ作成)にシステム開発の知識を要することもある。

 RPAは現場レベルでシナリオ作成できるほうが業務の変化にも柔軟に対応できる。しかし、自社で開発要員を抱えたり育成するのは難しいケースもある。これを支援するため、アウトソーサーがRPA活用支援サービスを提供しはじめている。主要ITベンダー各社の製品と、サービスベンダーの取り組みを見ていく。

GUIベースでシナリオ作成
PC単独で稼働する小型ロボット

 ユーザックシステムの「Autoブラウザ名人」は、Web画面上で行う、あらゆる作業を自動化するソフトウエア(図1)。Webシステムへのアクセス、ログイン、クローリング、マウス/キーボード操作、ダウンロード/アップロード、画面の印刷・保存など、業務担当者が行う手本の操作を自動的に記録し、シナリオを作成。編集機能を使って実業務にあわせた細かな調整を行える。Webブラウザ以外にも、Windowsアプリケーションの操作も記録可能だ。

図1 ユーザックシステム「Autoブラウザ名人」の操作イメージ

図1 ユーザックシステム「Autoブラウザ名人」の操作イメージ

 同社はもともと電子受発注業務のシステム開発を手掛けており、WebEDIの仕組みが普及し始めた2004年からブラウザ操作の自動化アプリケーションを発売。すでに10年以上の実績があり、近年のRPAへの関心の高まりから、電子受発注以外の業務での採用も進んでいる。コールセンターのバックオフィス業務などにも利用される。

 同製品はPCインストール型で、1台で1つのロボットを動かせる。シナリオ開発に制限はなく、1つのロボットで複数業務を登録可能。ただし、並列処理はできず、複数業務を実行する際は垂直に並べて動かす。並列処理を行いたい場合はロボット(PC)を増やす。

 ライセンスには開発版と実行版がある。開発版はシナリオ開発と実行が可能。実行版は開発版で作ったシナリオを実行するだけだ。よくある利用方法は、開発版1台と実行版複数台の組み合わせ。自動化する業務量や運用形態によって実行版の台数が決まる。

 シリーズの「Autoメール名人」はメールの送受信に伴う業務を自動化。ライセンスの考え方は「Autoブラウザ名人」と同様だ。

 NTTアドバンステクノロジの「WinActor」は、業務担当者がPC上で行うさまざまな操作をシナリオとして記録・編集し、それをPC上で動作させることで、人が行う煩雑な操作、大量データを扱う業務などを正確に再現する。ベースはNTT研究所がグループ内の業務効率化や自動化を目的に開発したツールだ。NTT東日本/西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモなどで採用。実業務に即したブラッシュアップを繰り返し、実用性が高いことから、2014年に一般販売を開始した。純日本製のRPAツールとしてBPOベンダーなどでも採用が進んでいる。

 特徴は、専門的なプログラムの知識が不要で、GUIで直感的にシナリオ作成・編集が可能な点だ。イベントモード(Windowsアプリ操作)、IEモード(Webブラウザ操作)、エミュレーションモード(マウス/キーボード操作)の3つのシナリオ作成モードと画像マッチング機能を組み合わせながらシナリオを自動生成。編集画面でフローチャートに条件分岐や繰り返しなどの処理を加えることで、柔軟に実務に沿ったシナリオを作成できる(図2)。

図2 NTTアドバンステクノロジ「WinActor」のシナリオ編集イメージ

図2 NTTアドバンステクノロジ「WinActor」のシナリオ編集イメージ

 動作環境はPCインストール型で、1台につき1つのロボットを動かせる。同時に実行できるシナリオは1つで、複数シナリオを動かしたり、同じシナリオを繰り返したりする場合は垂直に並べて実行する。ラインナップはフル機能版と実行版の2種類。前者はシナリオ作成・編集・実行ができ、後者は実行のみ可能だ。WindowsサーバーOS対応も予定している。

大量業務をパワフルに処理
サーバーで稼働する大型ロボット

 ベリントシステムズジャパンは、センターでの業務最適化ソリューションを提供する一環で、業務プロセス分析/自動化ソリューションを提供している(図3)。

図3 ベリントシステムズジャパン「業務プロセス分析/自動化ソリューション」のソリューション構成

図3 ベリントシステムズジャパン「業務プロセス分析/自動化ソリューション」のソリューション構成

 業務プロセス分析ソリューション「Verint Desktop & Process Analytics(DPA)」は、オペレータのデスクトップ操作を記録・可視化・分析し、オペレーションの改善やオペレータの育成などにつなげる。具体的には2つの分析機能を提供。(1)アプリケーション分析は、オペレータ個々のデスクトップ作業を常時監視し正確で詳細なデータを収集する。そのうえで、誰がどのアプリケーションをどのくらい操作しているかを可視化・分析。特定の操作に時間がかかるオペレータを研修フォローしたり、全員が迷う傾向のある操作を改善したりとオペレーションの最適化につなげる。また無操作時間の傾向なども分析できる。(2)プロセス分析は、定められた業務プロセスと実際に行われた業務プロセスを比較分析し、プロセスの流れを改めて検証して矯正していく。

 オペレーション支援として自動化と誘導ガイド機能を搭載、オペレータが迷うことなく顧客応対できるようアシストする。これは業務アプリケーションの改修を行うことなく、次の操作などを自動表示する機能。これにより、ミスの削減や生産性向上につなげられる。

 自動化ソリューション「Verint Robotic Process Automation(RPA)」は、ロボットツールによる定型業務の完全自動化製品。条件分岐や繰り返し、外部アクセスなどの設定を加えることで柔軟にシナリオを作成できる。主にバックオフィス業務の効率化に利用。コールセンターだけでなく、一般オフィスでも広く活用できる。

 システム構成はサーバー型。ロボットのライセンスの他、開発環境であるスタジオソフトが必要。

 ナイスジャパンのRPAソリューション「Advanced Process Automation(APA)」(旧・Real-Time Solution)は、全世界で500社以上が導入、50万台以上のロボットが稼働しているという。

 主要機能は「Desktop Automation」(アシストロボット)、「Robotic Automation」(全自動ロボット)、「Desktop Analytics」(デスクトップ分析)──の3つ。

 「Desktop Automation」はまさにコールセンターで利用することを意識して開発された。半自動のアシストロボットがデスクトップ上に常駐、さまざまな機能で顧客応対業務を支援する。代表的なものが複数システムの情報を1つの画面に集約する機能だ(図4)。オペレータは、CRMシステムや受注システム、FAQナレッジなど、常に複数のシステムを切り替えながら業務を行う。これらは煩雑で新人ならミスを招く可能性もある。そこで必要な情報を1画面に集約、さらにガイダンス機能で顧客に何を聞くべきか、どんな操作をすべきかをアシストしてくれる。

図4 ナイスジャパン「Desktop Automation」(アシストロボット)による画面集約のイメージ

図4 ナイスジャパン「Desktop Automation」(アシストロボット)による画面集約のイメージ

 「Robotic Automation」は、完全自動化のRPAソリューション。人が介在する必要のないタスクを仮想デスクトップ上に常駐しているロボットがキューに従って読み込み、業務を処理する。

 「Desktop Analytics」はデスクトップの操作を記録し、誰がどのアプリをどれだけ使っているか、個人・チームなどさまざまな軸で可視化・分析する。これにより、研修や業務プロセスの改善などにつなげていく。

 サーバー型で、アシストロボットのライセンスはオペレータの人数分必要。2018年3月までに機械学習を搭載し、オペレータの応対を支援する新機能を提供予定だ。

業務の棚卸しで自動化を判断
現場把握した提案が武器

 RPAソリューションは、現場の業務プロセスに即してロボット(シナリオ)を設計する必要があり、現場主体で活用できなければ、その効果を十分に発揮することは難しい。これを支援するため、コールセンター運営およびバックオフィス業務を受託するアウトソーサーが、サービスメニューの拡充をはじめている。

 KDDIエボルバは、コールセンターの業務課題を解決する手段の1つとしてRPA活用を挙げる。

 「クライアント企業の業務全体をアセスメントし、まずは課題を洗い出します。そのうえで最適なソリューションを提案します。例えば、Webでの自己解決を促したいならAIチャットボット、バックオフィスの業務効率化ならRPAというふうに、課題ごとにサービスメニューを揃えています」と、運用統括本部サービス開発本部セールスエンジニアリング2部の岡本竜征部長は説明する。

 RPA導入支援では、まずクライアント企業の業務フローを分析し、自動化範囲の特定やシナリオの策定、RPAツールの選定、非自動化/イレギュラー処理の設計などを行う。これを業務に適用し、効果検証・チューニングを繰り返しながら処理精度やスピードの向上、コスト適正化を実現していく。リソースに余裕ができれば、クライアント企業の他の業務も取り込み、自動化範囲の拡張提案を行う。これを繰り返すことで、継続的にビジネスを獲得していく(図5)。

図5 KDDIエボルバのRPAソリューションへの取り組み

図5 KDDIエボルバのRPAソリューションへの取り組み

 活用するRPAツールは、複数製品を抱えて、業務にあわせて選定する。例えば、1拠点・数席で処理している定型業務であれば、PCインストール型のツールを利用する。また大規模案件で複数拠点にまたがって処理している業務なら、サーバー型のツールを利用したほうが運用管理は効率的だ。

 運用実績では、代表的なものでKDDIのビリング業務の自動化がある。運用1本部 運用1部 運用2グループの櫻田尚登グループリーダーは「毎月9000件を手作業で実施していた入金情報のシステム登録を、RPAを活用することで大幅に業務効率化しています。具体的には、完全自動化を実現したことでミス率はゼロになり、作業時間は92%削減できました」と説明する。この他、自社の全国29拠点・約2万2000人のオペレータの勤怠管理業務もRPAを使った自動化に着手しはじめており、ノウハウとして展開していく考えだ。

 RPA関連の人材育成にも取り組む。前述のKDDIの業務自動化を手掛けた同運用2グループの辻田功輔スーパーバイザーは「全国拠点にRPAツールを使いこなせる人材を揃えていく計画です。現場業務に入り込んでシナリオを書ける人材を育成すれば、クライアント企業に対して提案できることが増えますし、ビジネスチャンスも広がります」と強調する。

 BPOサービスを手がけるTMJでもRPA関連サービスを強化している。これまでは社内間接部門の業務効率化やコールセンター現場での改善活動の一環としてRPAを活用し、ノウハウを蓄積してきた。これをサービスメニュー化し、RPAへの関心が高まるコールセンター/BPO市場に向けて訴求していく。

 「既にRPAを使った業務改善ができないかといった声をいくつもいただいています。そこで今年8月に正式なサービスメニューとしてラインナップします。まずは既存のお客様の業務をアセスメントし、自動化できる領域を見極めながら提案していきます」と、事業基盤本部事業企画部の中林真純部長は説明する。

 現在受託している業務を効率化するだけで終わらない。「その前後のプロセスにある業務についても分析・提案を行い、効率化を図っていきます。クライアント企業のビジネスプロセスの全体最適をともに実現していくことで、当社の経営理念である『Client Value』を実現していく考えです」と、同事業企画部の佐藤寛子氏は強調する。

 同社のRPAの適用はBPO業務が先行しているが、コールセンターでの活用も始まっている。図6はある住設メーカーのアウトバウンドリストの作成業務の事例。加盟店より受信したメールをもとに顧客リストを作成し、この情報をもとに顧客DBを検索して必要情報を取り出し、リストを補完する。従来は業務終了後にSVが残業して手作業で行っていた作業だが、RPAを適用したことで、この工数をほぼゼロにすることができた。

図6 TMJのRPAを使った業務改善事例

図6 TMJのRPAを使った業務改善事例

 活用するRPAツールは限定しない。「システムに依存しないサービスを作ります。クライアント企業の業務内容やニーズに応じて、最適なツールを選定して提案する考えです」と、事業基盤本部 業務設計・開発支援部 立上変革室の石井巧磨氏は話す。とはいえ、現場においては業務の変化に柔軟に対応していくことも必要だ。このため、現場のSVやマネージャーでも扱いやすい、PCインストール型のツールを中心に活用していく。またこれにあわせて、現場で要件定義やシナリオ作成ができる人材を育成していく計画だ。

 同社は「QCサークル活動」をベースにした「小さな改善」活動を行っている。現場では業務改善に対する意識が高く、RPA活用を促進させる下地は整っている。作成したシナリオについては全社共有し、カスタマイズしながら横展開を図っていく考えだ。

 両社に共通して言えるのは、現場主導へのこだわりだ。現場業務を知り、さまざまなケースを共有していくことで、柔軟なシナリオ設計ができるといえる。


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