クレーム対応のレシピ 第25回

中高年対応は“置き去り”にしないこと!
「初心者」の気持ちを忘れるべからず


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 先日、社内会議で若い社員がケータイの話で盛り上がっていた。「3G」「クロッシー」「Wi-fi」「LTE」「フェルトセム」etc、彼らの使う言語は、私にとっては、ちょっと振り向いてみただけの異邦人のものである。

 ケータイをはじめ通信、PC、家電類は、顧客層が広く、商品は複雑化し、変化のスピードも速い。

 例えば、老舗の旅館や高級ホテルなら、接客の方法や業務の知識がそうはコロコロと変わらない。
 顧客層もおおよそ決まっている。
 つまり、顧客の反応の予測がつく。

 顧客層が広く進化途上にある商品・サービスのカスタマーサービスは、情報や表現の見直しが常時必要だ。

 用語や仕組み、使い方、料金体系などすべてを理解できる者は、顧客はおろか応対者にすら少ない。
 その証拠に応対者によって回答が異なることはよくある。
 ケータイショップで、声を荒げている中高年の人をよく見かけるが、それこそ異邦人と会話している気分になって苛立っているのだろう。

 セールスの世界では、若い人には「最先端のものです」、中高年には「皆さんが使っているもの」と言って勧めると売れるらしい。

 要するに商品に追いつかない、わからないものが多いという“置き去り感”が中高年のストレスになっている。
 私もそうだ。それが何かのときにクレームとなって爆発するのではないか。

 最新の機器を前にして「わからへんのやなぁ。これが」と嘆いている人は多いのだ。

 応対者は、この「わからない人の方が多い」という事実をわかっていなくてはならない。
 ややこしい言い方をしたが、説明とは、相手に新しい情報を与え、相手に理解を求めることである。

 その際、注意すべきことは相手の知識の量と質だ。これを鑑みて、その人に合った言葉で話さなければ、わかりやすい話にはならない。
したがって、10あることをすべて話すのではなく、相手が本質的に何を求めているかを察知し、話を絞り込むことが大切だ。

 一般的に、わけのわからない言葉が羅列されると、“置き去り感”というストレスに火がついて、クレームに広がっていくことが少なくない。

 何でもそうだが、専門的な知識がつけばつくほど、忘れていくのは自分が「初心者」であった頃のことだ。
 応対のプロになるとは、知識が豊富な大学の教授のようになることではなく、顧客を満足させるようになることなのだ。
 ここは決して勘違いしてはいけない。

 さて、中高年が置き去りにされるのはエンターテイメントの世界にもある。紅白歌合戦にも出ていた“きゃりぃぱみゅぱみゅ”――グループ名なのか、「姓は、きゃりぃ。名は、ぱみゅぱみゅ、オヨヨ。」なのか、男性なのか女性なのか、何の歌を歌っているのか全然わからない。
「感想は?」と言われると「わからへんのやなぁ。これが」である。


(コンピューターテレフォニー2013年4月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時52分 更新

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