トレーニングでどのように心情察知力を強化するのか 

 先日、あるチケットセンターに電話をしました。「1月に申込みをした公演のチケットは、いつ発送されるのか?」という問い合わせです。

 その公演は3月下旬、もうすぐです。しかも、残念なことに用事が入ってしまい行けなくなったので、代わりに行ける友人を探しているところです。そんな事情があり、少しでも早めに手元にチケットが欲しいのです。

  コールセンターの応対者は、明るい声で感じの良い女性でした。

 「チケットの発送についてのお問い合わせですね」の復唱も信頼できそうです。

 しかしそのあとの応対は「発送の日程につきましては、こちらではわかりかねます」とだけ即答。

 声のトーンは優しいのですが、あまりに素っ気ない応対に、思わずこちらの困っている事情を話してしまいました。

 それでも声のトーンや口調は変わらず「お申込み頂いた時にもご説明していると思いますが、公演の一週間前までにはお届けいたしますので、もう少しお待ちください」と事務的な応対です。

 私の気持ちを全く解さない、明るく感じの悪い応対でした。

  もちろん、いつも利用しているチケットセンターですから、そのシステムは知っています。

 でも心配で電話をかけてしまったのです。

 電話を切った後に「もうこのチケットセンターでは絶対に買わないぞ!」と思っていました。

 もし「ご心配をおかけして申し訳ございません」とか、「チケットがお手元に届くとご安心いただけるのですが…」などのひと言があれば、応対の印象は随分違っていたと思うのですが。

 まさにこちらの心情を察知しない応対でした。

 コールセンターに電話をかけてくるお客さまは、自分の気持ちに気づいて寄り添ってくれる、そんな応対を期待しています。

 ネットと電話応対の違いは、文字では伝わらない声や言葉に気づいてくれる応対です。

 だからこそ、不可欠なのが"心情察知力"です。 

 これからのコールセンターの大きなテーマではないでしょうか?


 きくスキル研究会では、「きくスキル」を8つの要素で構成し、それぞれを定義づけています。

 「あいづち力」「復唱力」「質問力」「音声表現力」「語彙力」「要約力」「沈黙力」「心情察知力」。
 そのなかでも「心情察知力」はきくスキルの根幹となる要素と捉えています。

 実際に「心情察知力」は8つの要素の中で一番反響が大きく、問い合わせや質問を多くいただきます。

 特にSVやトレーナーの方から「心情察知力はコミュニケータの資質によるところが大きいと思うのですが、トレーニングでスキルアップすることができるのでしょうか?」と訊かれます。

 答えは「yes」。

 確かにその人の資質によるところは大きいのですが、トレーニングでスキルアップは図れます。

 心情を察知するには3つのステップがあります。ステップ1は、相手の心情やその変化に気づくこと。

 ステップ2は、気づいた心情を分析すること。ステップ3は、察知した心情をきくスキルを使って受け止めること。

 この3つのステップを踏んで、お客様の心情に添った応対をする。"心情察知力"をトレーニングするには、対象となるコミュニケータが3つのどのステップで躓くのか、なぜできないのかを、知ることから始める必要があります。

 ほとんどのコミュニケータは、今までに心情察知力のトレーニングを受けた経験を持つ人はいません。

 だからこそ、研究会ではトレーニングすることでスキルアップが図れると考えています。

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年03月08日 10時19分 更新

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