KPIで現状把握しよう

 コールセンターのKPIで管理すべき対象を大きく大別すると、「品質」「生産性」「収益性」に区分される。

■品質を示すKPI
 代表格としては、繋がりやすさを示す応答率サービスレベル(基準内応答率)がある。応答率は、「かかってきた電話の総受電数のうちオペレータが対応した電話数の割合」だ。サービスレベルとは「かかってきた電話の総受電数のX%はY秒以内に応答する 」ということを意味し、「X/Y」または「X% in Y sec」と示す場合が多い。サービスレベル=80/20(X=80%、Y=20秒)とするセンターが一般的とされる。

■生産性を示すKPI
 代表的な指標である稼働率について少し深堀して解説する。稼働率とは、オペレータやSVがコールセンターでログイン中にどれだけ実業務(会話+後処理)を行ったかを計る指標だ。
 実は稼働率の計算には2通りがある(下図)。



 一般的にコールセンターの現場では、オペレータの疲弊度を測るという目的で、稼働率①:(会話時間+後処理時間+その他時間)/(総ログイン時間-離席時間)を使用する場合が多い。しかし、経営目線で見る場合には、離席時間も含めて有給時間で消費されている中でどれだけの稼働生産性を出しているかを把握するため、稼働率②:(会話時間+後処理時間+その他時間)/総ログイン時間も併用してチェックすべきだ。

 稼働率の目標ラインとしては、オペレータの疲弊度と生産効率のバランスを考慮して、80%と定めるセンターが多い。目安としては、80%~85%が目標ライン、85%~90%が注意ライン、90%以上が危険ラインという認識が必要だ。コールセンターは季節変動幅が大きい性質を持つため、時に90%を超える場合もあれば、70%を下回ってしまう場合もある。しかし、1カ月を通じて常に90%を超えているセンターは、何らかの対策が必要だ。



 稼働率①を使用する場合、現場の管理者にとっては離席時間の管理が重要な要素になってくる。計算式の分母の離席時間が増加すればするほど稼働率は増加(悪化)していく。離席時間が必要不可欠な休憩や勉強会に使用されていれば問題ないが、単に稼働率を見せかけ上、増加させる目的で余計な離席時間が消費されているようであれば、即座に調整しなくてはならない。センター長や経営層に最適な稼働率を維持させる目的で不必要な離席時間が消費される場合もあるため、センター管理者はしっかりその勘所を見定めたい。また、お昼時間を「ログアウト」とするか、「ログイン中の離席」とするかでも稼働率は変わってくる。オペレータが有期雇用社員で、お昼時間が無給休憩時間の場合は、本来ログアウトすべきだ。給与が払われていない時間は、稼働時間に含めないという考え方が一般的である。

■収益性を管理するためのKPI
 代表格は、CPC(コスト・パー・コール:1コールにかかるコスト)やCPA(コスト・パー・アクイジション:1件獲得するのにかかるコスト)だ。過去10年以上にわたり公開研修で多くのコールセンター管理者と接する機会があるが、インバウンドであればCPC、アウトバウンドであればCPAをきちんと集計・分析しているコールセンターの割合は2割にも満たないのが実情だ。
 経営層からすると、コールセンターはコストがかかるイメージが強い。CPCは、コールセンターの運営を映し出す鏡のような存在だ。処理時間の増加や、生産性の悪化、地域限定正社員制度の導入による人件費比率の上昇などさまざまな現象、施策の影響がCPCの上昇につながる。
 KPIの考察は奥が深い。次号は、より複雑なKPIマネジメントについて解説する。


(連載「新任マネージャーのためのコールセンター運営の基礎知識」より抜粋 月刊コールセンタージャパン2017年1月号掲載

著者:五月女 尚
この著者の講座は、「
コールセンター運営の基本知識とマネジメント入門講座」「 基礎から学ぶ KPIマネジメント実践編」です。

2024年01月31日 18時11分 公開

2019年11月21日 09時55分 更新

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