定着する組織作り『人財』最適マネジメント講座 第4回

 

成長とモチベーション向上には
“プロセス重視型”の評価がポイント


コールセンターの人材評価は、「結果」だけを見るスタイルには向いていな い。企業ミッションと連動した目標設定に加え、その目標に向けた取り組み の「経過」を含めて評価することで、労働集約型の職場にありがちなモチベ ーション低下を防ぐことができる。適正な人材評価手法について解説する。


著者:HDI-Japan(ヘルプデスク協会) 長掛文子
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 今回は、HDIサポートセンター国 際認定(以下SCC国際認定)の項目 の一つである「従業員管理」の中か ら、「実績評価」について紹介する。 実績評価とは、スタッフの給与や 賞与に関わるだけのものではない。 「できた」「できなかった」かの結果 だけでなく、「どのように取り組んだ のか」、つまり過程(プロセス)を知 ることも大事だ。労働集約型の職 場であるコールセンターは、管理者 が全従業員の“プロセス”を把握することが難しい。このため、管理者 は定期的にスタッフと面談をし、目 標に向かってどのように取り組んで いるのかを確認したり、フィードバ ックしなければならない。

 また、スタッフの目標達成評価に 関する基準は、センターや企業の目 標・評価と連動するべきだ。個人 目標達成の結果が、チームやセンタ ー、企業の目標達成につながってい れば、スタッフ1人ひとりに“組織を 支えている”という実感がわいてく るはずだ。
 さらに、前号まで述べてきた、 「職務内容定義」「トレーニングプラ ン」「キャリア開発プラン」と今回の 「実績評価」のプロセスがすべて統 合されていることが望ましい。

目標設定、定期面談、信頼関係
育成につながる評価方法


 「自分は正しく評価されている」 と感じているスタッフはどれほどい るだろうか。上司が正しい評価を していると思っていても、部下がそ う思っているケースは多くない。シ ステマチックに評価することが、必 ずしも正しい評価というわけでは ない。いくらすばらしい評価制度を 構築したとしても、必ず不満は出る だろう。
 正しい評価を実施するためには、 ①適切な目標の設定、②定期的な フォローアップ面談、③実績評価、 が不可欠だ。
 目標は、高すぎず低すぎず、「が んばれば手が届く(届きそうな)範 囲」が望ましい。“適度なプレッシャ ー”は、最も高いパフォーマンスに つながると言われる。目標が高す ぎるとプレッシャーが強すぎてメン タル不全を引き起こすこともある し、低すぎると却ってやる気が出な い(図1)。


 自らのキャリアアップのための目 標であることも必要だが、個人目標 は組織目標と連動していなければ 意味がない。自分が目標達成する ことが組織の目標を達成することに 繋がっていると思えることが大事 だ。このため、管理者はセンターと してスタッフに何を望むのか、組織 目標達成のために、どのような役割 を担って欲しいのか、面談をしな がらスタッフが納得できるような目 標設定をする必要がある。

 一般的に、目標設定は半年または 1年単位で行われることが多い。目 標設定から次の評価時まで何もし ない企業が少なくないが、定期的に (少なくとも4半期に一度)フォローア ップ面談を実施し、目標が達成でき そうか、妨げになっているものはな いかなどを確認しながら、必要に 応じて支援することも忘れてはなら ない。

 定期的にフォローアップ面談を実 施していると、結果だけでなく経過 も把握することができる。がんばっ た結果目標達成したのか、がんば らなかったが達成したのか、がんば らずして達成できなかったのか、が んばったが達成できなかったのか、結果も大事だが経過 も同様に大切だ。

 そして最も大切な ことは、管理者とス タッフとの人間関係 だ。信頼できない上 司からの評価に納得 できないのは当然 だ。日頃からコミュニ ケーションを図り、ス タッフとの信頼関係 を構築しておくこと は言うまでもない。

 なお、スタッフを評 価、育成するためには、効果的な褒 め言葉を使いこなすことも必要だ。
 褒め言葉の表現方法はさまざまだ が、たとえば「さすがだね」「やった ね」「すごいじゃないか」「すばらし い」「やればできるじゃん」などは、 主語が「あなた(You)」となるが、 「助かったよ」「頼りにしているよ」 「できると思っていたよ」「君に頼ん で良かったよ」などの主語は「私(I)」 だ。一般的に、Iメッセージのほう が相手の心に響くと言われている。

“なぜ悪いか”を知ることが大事
セルフモニタリングで改善促す

 
評価にモニタリングを活用してい るセンターは少なくない。モニタリ ングは、センター全体の品質を上げ ることを目的に実施するものだが、 個人評価としても使えるツールの一 つだ。
 モニタリング評価も実績評価同 様、結果のフィードバックだけでは 不足だ。まず、スタッフ自身が自ら の対応が良いと思っているのか、 悪いと思っているのかを知ることが ポイントだ。これにより、センターの 基準とズレがないかを確認できる。 ここにズレがあると、いくら悪い部 分を指摘しても改善は見込めない。
 なぜならどのように改善してよいの か分からないためだ。

 センターの基準とズレがないか を確認するためには、自分自身のコ ールを聞かせ自己評価させること が有効だ。そのうえで、SVまたは 品質管理担当者がフィードバックを 行う。自己評価とSVの評価にズレ がなければ改善に時間を要しない だろうが、ズレが生じている場合は、 「なぜ悪いのか」を理解させる必要 がある。
 改善フェーズでは、必要に応じた トレーニングや個別指導を行うな ど、センターとしての支援体制も検 討、構築する必要がある(図2)。


(コンピューターテレフォニー2011年1月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 11時37分 更新

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