定着する組織作り『人財』最適マネジメント講座 第3回

 

“押し付け”で人は育たない!
Can・Must・Wantのバランスがカギ


「ここで長く働きたい」と思わせるためには、キャリア開発プランが必須だ。 そして、その内容には、“すべきこと(Must)”だけではなく、“したいこと (Want)”を含み、“できること(Can)”が確認できることが不可欠だ。離職 予防とモチベーション向上を促す、キャリア開発プランの構築法を解説する。


著者:HDI-Japan(ヘルプデスク協会) 長掛文子
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  今回は、HDIサポートセンター国 際認定(以下SCC国際認定)の項目 の一つである「従業員管理」の中か ら、「キャリア開発プラン」について 解説する。
 世間一般の労働環境を見渡すと、 良くも悪くも、上司が部下に進む方 向を指し示す時代ではなくなってい るようだ。多くの企業で、キャリア 開発のためのプログラムが用意さ れ、自分自身でステップアップの方 向性を定めることができる制度が 整いつつある。キャリア開発プラン は、スタッフの能力、定着率、業務 満足度を高めるうえですでに欠か さないものとなっている。

 しかし、コンタクトセンターの歴史 は浅く、企業としてのキャリア開発 プランは存在したとしても、それが センター業務と連動していないケ ースが少なくないようだ。
 「私はいつ まで一次窓口で電話対応をするの だろう」「どうしたら、SV(スーパー バイザー)になれるのだろう」と悩むスタッフは多い。退職理由の多く は、「そのセンターで自分がどのよ うにキャリアアップしていけるのか が見えなかった」と聞く。
 仕事の楽 しさ・やりがいだけで、モチベーシ ョンを維持することは難しい。高い 目標設定や、ステップアップを実感 できる仕組みが不可欠だ。つまり、 スタッフが「ここで長く働きたい」と 思えるセンターにするためには、よ り実業務に即したキャリア開発プ ランが望まれている。

必要経験年数や資格も含め
職務定義がキャリアプランの基礎


 例えば、SVに抜擢される基準が あいまいなことに対しスタッフから 不満の声が挙がるセンターは少なく ない。職務内容定義書もなく、トレ ーニングも体系化されていない環 境では、「SVは上司の好き嫌いで 選ばれているに違いない」という間 違った認識すら浸透することも往々 にしてある。

 そのような状態から脱却するに は、まず、すべての職種の職務内容 を定義することが必要だ。業務内 容だけではなく、必須とする、また は推奨するトレーニングや資格など も挙げたうえで、各職種に対する必 要最低経験年数も記載する。これ により、最短何年でSV(またはその 他の職種)になれるかや、なるため に何をしなければならないかなど が明確になり、自らのキャリア開発 プランを描けるようになるはずだ。

 これが、スタッフにとって、「自らの 希望や能力に応じてキャリアを選 択できる」という環境になる。もち ろん、職務内容定義書を作成する だけで、働きやすい職場環境にな るわけではない。キャリア開発プ ランについて、入社時および最低で も年1度、上司との面談を実施し、 年次や中長期(3年後、5年後など) の目標を立てる機会を設けることが 必須だ。これにより、初めて「ここ で長く働きたい」と思えるのだ。

キャリアの定義とチェック体制
「自己育成」を促す仕組み作り


 次に、キャリア開発の手順を解説 する。
 まず、自分の長所と短所を知るこ とが大切だ。「したいこと」と「でき ること」は違う。そのため、自分が 「したいこと」ができようになるため に、何が足りないのかを理解し、自 ら習得することが重要だ。また長所 をどのように伸ばすかも忘れてはな らない。仕事は、会社から与えら れるのを待つばかりではいけない。
 自ら開発しなければ道は開けない ということも示す必要がある。

 もちろん、企業に勤める以上は 自分の「したいこと」だけを優先し てはいけない。「しなければならな いこと」は何かを理解し、きちんと 企業に貢献することも大事だ。「し たいこと」「できること」「しなけれ ばならないこと」のバランスをうまく とれるとよい。
 つまり、①自分は何がやりたいか (Want)、②自分は何が得意なのか (Can)、③センターで何を求められているか、センター内での自分の価 値(Must)―この3つをバランス よくキャリアマップに組み込むべき だ(図1)。この3つの重なりこそが、 そのセンター(企業)で働くモチベ ーションに影響すると言っても過言 ではない。


 上司はスタッフのWant、Can、 Mustを理解し、目標設定後のフォロ ーを行う必要がある。評価だけで なく、最低でも四半期に1度の面談 とフィードバックは必要だ。Mustだ けを押しつけるのではなく、スタッフ 個々のWantとCanを普段のコミュニ ケーションから把握し、個々の「した いこと」と「しなければならないこと」 を近づけていくこと、それが上司の 役目ではないだろうか。

集合研修は非効率?!
トレーニングは“部品化”が有効


 キャリア開発を描いたら、それに 沿ってスキルアップする。それを支 援するのがトレーニングだ。
 定期的な集合研修を実施するセ ンターがあるが、一律のトレーニン グはコストがかさむばかりで有効で はない。スタッフごとに必要なトレー ニングは異なるはずだ。トレーニン グプログラムを「部品」として選択で きる環境を作ることが、コスト最適 化と真のスキル向上につながる。
 具体的には、スタッフごとにスキ ルマトリクス表を作り、定期的にス キルレベルをチェックし、自分に足り ないものを補完するトレーニングを 選択し受講するという流れだ。

 職務内容定義に沿って各職位へ の要求スキルを明示し、スタッフご との実スキルと照合してギャップ分 析を行う(図2)。

 そのうえで、そのギ ャップを埋めるトレーニングを用意 する。このように、キャリア開発と職 務内容定義、トレーニングはつなが っており、一気通貫で構築していく ことが望ましい。

(コンピューターテレフォニー2010年12月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 11時35分 更新

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