コールセンター「進化の担い手」 QAの選び方/育て方第2回

 

『顧客の目線』『観察眼』――
QAに必要な5つの資質


品質評価の専門職、QA(クオリティ・アシュアランス)には、顧客視点や観察眼、コミュニケーション能力、粘り強さなど特別な資質が求められる。これらの能力は、同じくモニタリング業務を行うSV(スーパーバイザー)に求めるものとは異なり、さらなる繊細さと冷静さが必要になる。今回は、QAが身に着けるべき資質とスキルについて解説する。


著者:B-コミュニケーション 高橋珠実
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 QA(クオリティ・アシュアランス)に必要な資質とは何か。筆者は、QAに求める資質として、「お客様応対が好き」「観察眼」「コミュニケーション能力」「全体最適が考えられる思考」「あきらめない心」の5つが挙げられる。

 『お客様応対が好き』というのは、例えば業務改善に取り組む場面で、顧客目線で物事を考えられることにつながる。これは、根本的に顧客応対が好きでなければできない。顧客に“より良い応対”を提供することは、自分の好きな人、家族、友人に対してと同じ様に個々の顧客に配慮した応対ができることである。そのように考えながら応対に取り組むこと自体を好きであることが、とても大切だといえる。

 『観察眼』とは、いわゆる「目配り」「気配り」につながるものである。電話は顔が見えないとは言うものの、顧客とのやりとりにおいては、「声の表情」「語尾の強弱」「相づちのテンポ」「無言の間」「周囲の音」など、電話の向こうの“状況”を“言語”として把握するだけではなく、耳を通した“心の眼”で感じとることが大切である。応答者側の音声からも、「第一声」「声の表情」「挨拶」「相づち」「テンポ」などから、どんな状況にあるのかを聞き分けたり、応答者の眼や表情、口元、資料の確認方法などから、「印象貢献」「目的達成」のどちらのバランスが崩れているのかを分析するための観察眼を持っていることがQAとしての大きな強みとなる。

 『コミュニケーション能力』とは、「話す」「聴く」力をいう。状況を把握して相手に伝わる様に説明できることは、指導の観点からも必要であるが、トークスクリプトの改善やQ&A作成、システムの見直しなどの仕組みを再構築する上で、会社側への調整や理解を得るための説得力も必要となる。

 『全体最適が考えられる思考』とは、QAが「モニタリングの専門家」として、課題を発見し改善を検討する時に「何を優先して改善するのか」を考える場面に必要である。重要なのは、聞き取ったモニタリング内容から全体最適の為に何を改善するのかを導き出すことである。もちろんQAとして現場に関わるためには、センター全般の運営知識、業務知識は必須といえる。QAは、顧客と応対者のやり取りを分析することで、応対者の個別指導なのか、トークスクリプトを改善するべきか、受付システムやFAQまでを変更するべきなのか――などを考える役割を担う。顧客に公平で統一したサービスを提供するために視野を広く持ち、最善の方法を検討する、そのために今までの習慣を「変えていく」勇気を持っていることも大切だ。

 『あきらめない心』とは、実際にさまざまな取り組みや施策においてなかなか向上した結果が見受けられない、応対者の育成に携わっても短い期間での育成では成長の度合いをなかなか感じられない――といった場面に必要である。そんな時に「もうだめだ」とあきらめてしまうと、組織の成長は止まってしまう。特に育成の場面では互いの気持ちや意識の改善など、なかなか思うようにはいかないことが多い。そんな中にあっても、強く柔軟に、そして継続して改善にむけて取り組んでいくための「へこたれない気持ち」「あきらめない心」が大切である。

QAとSVのモニタリングの違い

 SV(スーパーバイザー)がQAを兼任しているセンターや、SVの延長にQAというキャリアを置くセンターは少なくないが、SVに必要なスキルとQAに必要なスキルは異なる(図1)。

図1 SVとQAの役割区分


 QAに必要なスキルとは、聴きわける「鋭い耳」を育てることだ。これは、先の資質と違って、丹念に育てていくことが重要である。

 「鋭い耳」とは、モニタリング項目を事実だけではなく、その背景なども聴き分けること、発生している応対事実だけで、応対者の業務スキルや応対評価をするのではなく、事実と真意を捉える分析をするための「聞きわける耳」である。「観察眼」でも記載したが、まず観察できること、その上で「鋭い耳」を駆使して、お客様への心理的な負担、または応対者側の状態を把握できることが大切である。図2に、QAが鋭い耳を持っているかを検証する具体的な方法を示している。

図2 評価基準のブレを検証する


 SVが、日常の応対話法や知識面のバックアップ指導法としてモニタリングを活用しているセンターは多い。しかし、QAのモニタリングは、「事実から仕組みを考えていくためのスキル」が必要であるのに対して、SVにはできるだけリアルタイムで確認をしながら、即戦力としてのモニタリング機能を重要視する。

 QAは、モニタリングしたものを具体的に掘り下げながら傾向分析することが大切な役割となる。そのためには、個々のスキルだけに頼るのではなく、QAメンバー複数名によるグループモニタリング・カリブレーション(すりあわせ)を通して、全体視野を広げながら、決定していくことが必要である。各メンバーがディスカッションを通して、センターの目指すべき方向を論議し、自分達としてのあるべきセンター像を構築していくことが基本となる。

(コンピューターテレフォニー2008年11月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 11時59分 更新

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