コールセンター「進化の担い手」 QAの選び方/育て方第1回

 

QAは単なるチェック機関ではない!
“業務改善の動力源”としての3つの機能


QA(クオリティ・アシュアランス)は、コールセンターの品質向上を担う重要な役職として注目されている。しかし、その専門性を考慮すると、単純にオペレータやSVの延長線上に位置づけるべきキャリアではない。卓越したモニタリング・スキルを持つQAを選び、育成するにはどのようなプロセスが必要となるのか――本連載では、実地経験に基づいた独自の理論を展開する。


著者:B-コミュニケーション 高橋珠実
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 筆者が初めてQA(クオリティ・アシュアランス)に関して意識を強めたのは、今から9年前のことだ。当時、勤めていたサポートメンテナンス会社において、全国11拠点に分散していた受け付けセンターを東西2拠点に集約することが決まり、その運営サポートをすることになった。「この業務は絶対に大きく成長することが出来る」と夢を広げるものの、当時はまだコールセンター黎明期であり、「何をどのように運営すればよいのか?」「お客様が満足する応対品質はどのように考えれば良いのだろう?」と相談するところもないまま、一人で真剣に悩んだものだ。コンサルティング予算もなかったため、投資が必要な取り組みはどれも我慢せざるを得なかった。"良い"という噂を聞けば、他社のセンター運営を見学に訪問したり、アウトソーサーのコンサルティングセミナーにも参加した。指標を自分達で考え、さまざまなツールを自分達が発想し作りあげるなど、限られた予算内での運用を模索していた。

 その後、現在のコンサルタントに転職してから、数多くのクライアントと話をする機会が増えたが、どれもまさにかつて自分が悩んで取り組んできたことに頭を抱えている管理者が多いことに驚く。「お客様満足度を向上したい」という取り組みテーマは、どの会社でも共通のものだと感じる。

 本連載は、実際に暗中模索した体験をもとに、センター運営における品質管理手法について解説したい。

「モニタリングの専門家」を置く必要性

 QAに関しての考え方は、コール/コンタクトセンターによって、また企業、業種によって違うとは思う。しかし本連載では、「QA=モニタリングの専門家」と位置付けようと思う。

 QAの必要性について触れる前に、モニタリングの目的について整理する。一般的にその目的には、①オペレータ個々の業務知識確認、②新人やクレームなどの緊急対応時のヘルプ用、③応対スキルチェック(習熟度の確認およびデビューチェック、評価用)、④トークスクリプトなどルールが遵守されているか、またはQ&Aの活用度の確認、⑤顧客満足度分析、⑥クレーム分析――などがある(図1)。

図1 モニタリングの目的


 ①~③は、SV(スーパーバイザー)をはじめとした管理者の中である程度の応対知識があれば可能だ。実際に、日常行なわれているモニタリングはこのケースが多いはずだ。このケースでは、基本的な応対モニタリング用のシートは社内で作成し、項目は「基本応対力」「コミュニケーション能力」「総合印象」などで構成する。気をつけたいのは、「応対が丁寧」「回答が正しい」のどちらか一方だけを評価するのではなく、『印象貢献面』と『目的達成面』のバランスが常にとれている偏りのない基準を作ることだ。評価方法は、「3点法、4点法、5点法」などの点数式、または「○、△、×」などの記号式で評価をつけているセンターが多い。いずれにしても、評価の考え方として、(1)センターが求める目標設定値を決定しその基準との比較から評価する、((2)あくまでも満点を目指しマイナス項目を記述する減点方式――などに二分される。(1)では、あるべき目標値の根拠を明確にすること、(2)では、マイナスを指摘するだけではなく、どのように改善するべきかを明確にする必要がある。

 ④~⑥は、単なるオペレータ個々の応対改善ではなく、“センターの現状把握”がポイントとなる。これは、専門スタッフ(QA)によって行うのが望ましい。一つの事例応対の結果に縛られるのではなく、運用全体の中で、分析⇒予測⇒改善取組み⇒分析というサイクルで比較検討ができるモニタリングが必要だからだ。QAのモニタリングは、"単なるチェックではない"と意識することが必要だ。モニタリングの結果に基づいて、その応対に関連するマインド、スキル、システム(図2)に照らし合わせて、分析結果を予測し、今後の改善策をプログラムすることが大きな目的となる。こういったモニタリングは、センターとしての運用知識全般を把握できるQAを育成し自社内で取り組むのが望ましいが、それができない場合は、外部企業に調査として委託するケースもある。

図2 モニタリングによって見える業務課題


 多くのセンターでは、『オペレータ個々の応対力の向上』が即ち『お客様満足度の向上』という単一的な考え方が多い。個々の応対力についての課題を解決するために、モニタリングを重視するという傾向がある。だが、QAという専門家を配置した場合のモニタリングは、オペレータ個々の評価だけではなく、【個々の応対力】⇒【マインド・スキル・システムの課題改善】⇒【センター運営向上】⇒【お客様満足度の向上】というサイクルを形成してより大きな業務改善を行うものだということを忘れてはならない。

QAの業務は多岐にわたる

 QAの業務範囲は、運用・仕組・育成――の3領域に大別できる。各業務内容は、図1であげたモニタリングの種類と密接に関連する。それぞれの詳細は以下の通りだ。

<運用>
①運営管理
②指標管理(図1の③④)
③CS向上施策(図1の⑥)

<仕組>
①業務環境への配慮
②業務分析(図1の④⑤)
③プロセス改善(図1の④)

<育成>
①スキルアップトレーニング(図1の①)
②SV及びトレーナー育成(図1の②③)
③メンタルヘルス教育

 このように、QAの業務はスキル評価のみならず、運営管理全般に深く広く関わる。QAこそセンター運営の“要”であるといっても過言ではない。どんなに時代が移り変わり、どんなにシステムが向上しても、またセンターが電話主体であってもEメール主体であっても、そこには必ず社内外における「人と人とのコミュニケーション」が存在する。「QAとは何か?」について考えるとき、この事実を忘れてはいけない。

(コンピューターテレフォニー2008年10月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 12時00分 更新

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