SVのためのオペレータ指導要綱第3回



指導履歴の活用、セルフモニタリング――
“すきま”時間で効果を出せる4つの指導法


多忙なSVは、“すきま”時間の有効活用を心がけなければならない。今回は、日常の中で効果的なフォローアップを行うコツを紹介する。指導の履歴を記載したフィードバックメモの活用や、自身で課題に気付かせるセルフモニタリング、具体的改善策の提示、成功体験の承認――これらの行動を取り入れることでオペレータ指導は効率的かつ効果的になるはずだ。

著者:市場通信 石橋由佳
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 オペレータのモチベーションを低下させる最大の原因は「ほったらかし」です。いくらにこやかに日々の声かけを行っていたとしても、電話応対への評価やスキルアップのサポートがなければオペレータは次第にやる気が持続しづらくなってきます。とはいえ、多忙なSVにとって1人ひとりを細かくフォローすることは至難の業です。

 今回は、日常業務の中でオペレータを効果的にフォローする方法をご紹介します。

■評価履歴を見ながら指導する

 電話応対の評価と言えばモニタリングを思い浮かべると思いますが、これはチェック項目が多く評価にはどうしても時間がかかります。このため、現実的には頻繁な実施が難しいのではないでしょうか。

 モニタリングの目的が厳密な品質評価ではなく、オペレータのフォローである場合は、リアルモニタリングが大変有効な手段と言えます。ただし、コールを聞いて口頭でアドバイスをするだけでは、オペレータの課題の本質をとらえた内容になりにくいですし、聞いている方も後で振り返ることができません。"その場限りのお小言"になりがちです。

 そこで活用していただきたいのが、オペレータ別のフィードバックメモです(図1)。1枚のシートで、コールの概要(種類)、良い点、改善すべき点(その中でも最も悪影響を及ぼしている項目)、印象(総評)、気になるトークなどを簡単にメモする形式で、1枚に複数コールの評価を残せるようにしています。そうすると、「前回は何が課題であったか」を確認しながら、モニタリングを行えます。もし、その課題が改善されていれば、即座に声をかけて承認をすることができますし、まだ改善されていなければ個別トレーニングにつなげます。これは管理者用の記録メモですが、オペレータ指導の偏りや頻度、過去の履歴が一目でわかりますので、フィードバックスキルの向上にもつながります。

図1 フィードバックメモ
 

■聞かせて自分で気づかせる

 SVが忙しく、なかなかモニタリングができない場合には、定期的なセルフモニタリングの導入もお薦めです。セルフモニタリングとは、文字通りオペレータ自らが自身のコールを評価することで、録音された音源を実際のモニタリングシート/評価指標に基づいてチェックします。オペレータが自身の応対を客観的に聞き、システマティックに評価する機会は意外と少ないものです。改めて自身の応対を聞くことで、自分の欠点や足りていないスキルに気づくことがよくあります。自らの「気づき」は、他人(SV)からの「指導」よりもずっと納得性が高いので、改善につながりやすいものです。また、"質へのこだわり"という意識醸成にも有効です。

 ただし、オペレータはコールの評価が本業ではないため、「自分に厳しい人」「甘い人」の差があり、正確性にも欠けます。課題の多い人ほど気づきのレベルが低いため点数が高くなったり、上手な人ほど自分に厳しく採点が辛い、といったことがよくあります。セルフモニタリングは「気づきの促進」と位置づけ、その結果をスキル評価に反映すべきではありません。

■指摘よりも改善策を伝える

 改善点の指摘はとても重要ですが、それだけでは足りていません。一例をあげますと、早口という課題はとてもわかりやすいので、本人が気づいているケースが少なくありません。ところが、修正が難しいという特徴があります。「わかっているのに、なおらない…」と悩んでいる方には、「少しスピードが速いですね。スピードが速いとお客さまは理解しづらいですし…」と指摘しても無意味です。むしろ、具体的な対策を提示することが必要です。

 早口の改善策の一つとして、「大きく口をあけて話す」ことがあります。大きく口を開閉すると物理的に速く話しづらくなるという原理ですが、このことを伝えた上で何度かロールプレイングを行い、適切なスピードを見つけるまでが一通りの流れです。ここまで一緒に行えば、改善にぐっと近づくことができるでしょう。

 厳しい言い方をするなら、課題を指摘するだけならだれでもできるということです。どうしたら修正ができるか、具体的なアドバイスで課題解決への道筋を一緒に模索しながら改善へのステップを踏むことが大切です(図2)。

図2 改善を実現する伝え方
 

■成功体験を見つける

 「オペレータ個々の課題を発見し、改善指導することこそがオペレータ育成だ」と考えているSVは多いことと思います。しかし、重要なのはその先の「もう一押し」です。具体的には、「オペレータの成功体験を見つけて、言葉に出して承認すること」です。これこそがスキルアップの成否を握るカギです。

 あるオペレータが、先月できなかったスキルを今月習得したら、共にそのコールを確認し、「○○ができるようになりましたね。この調子です。」などと、声をかけることが大切です。そうすることで、オペレータは「ちゃんと自分のことを見てくれている」という安心感を得て、「頑張ったかいがあった」と感じます。これが、今後のさらなるスキルアップを促すモチベーションにつながり、SVへの信頼感も育まれます。実際、成績の低迷に悩んでいたオペレータが、1回の成功体験を共有したことで大きな自信をつけ、その後成績トップに躍り出たケースすらあります。

 苦手なスキルを見つけ、気づきを促進するとともに、改善策を提示する。そして、成功体験の積み重ねを共に味わうことができれば、オペレータのモチベーションを大幅にアップすることができるはずです。

(コンピューターテレフォニー2012年2月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 13時59分 更新

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