SVのためのオペレータ指導要綱第6回



SVはセンターの「資産」!
“指導効率”を意識して生産性を上げる


「いくら時間があっても足りない」と嘆くのではなく、決まった時間のなかで効率よくマネジメントすることが、SVには求められる。重箱の隅をつつくようなモニタリングや成長を望まないオペレータに時間を割くことは、センターの飛躍を阻むことにもつながりかねない。「誰を」「どう」指導するかを考え、的確に実施することが必要だ。

著者:市場通信 石橋由佳
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 SVは、単に“オペレータの延長線上のポジション”でしょうか。SVは、“スーパーオペレータ(最も優れたオペレータ)”である必要はなく、管理・教育など全く異なる職責を負っています。オペレータとは、本質的に仕事に関わる視点が異なるのです。

 今回は、この視点の違いからSVの業務について考えてみます。

■収益性・効率・品質を意識する

 オペレータとSVの大きな違いは、「マネジメントの視点」を持つか否かにあります。ところが、オペレータからステップアップしたSVの多くがこれを意識していない、もしくはどのようにそうした視点を身につけるかというところで行き詰っているのが現状です。

 マネジメントの視点とは、企業からみてプロフィット(収益性)、パフォーマンス(効率)、クオリティ(品質)の3つについて、センターがどのように貢献しているかを見ることです。プロフィットとは、売り上げや収益に対する貢献です。パフォーマンスは、処理効率をはじめとした現場の生産性です。クオリティは、応答品質や応対品質です。

 それぞれの目標値は、企業の戦略、センターのミッションによって決まり、重視する要素も異なります。SVは、「現場の責任者」として、オペレータ側にこうしたマネジメント側の方針を伝える一方、マネジメント層に対しても現場の状況や意見を報告します。いわば、マネジメントとオペレータの「橋渡し役」として、センター・マネジメントの中心にいるのです(図1)。

図1 SVはマネジメントとオペレータの橋渡し役


■「何を指導すべきか」をよく考える

 SVがマネジメントの核にあるということは、SVが非効率に動けば、それだけセンターの動きも鈍るのです。このため、日々の業務の中で「何に」「どれだけ」時間を割くべきかを常に考える必要があります。

 たとえば、モニタリングで、応対のスピードや言葉遣い、語尾の伸びなどについてSVが次々と指摘しオペレータを指導する場面をよくみますが、それはそのセンターにおいて本当に本質的な課題なのでしょうか。言葉遣いうんぬんよりも、「顧客の真の要望(気持ち)の理解」を促すトレーニングを行う方が望ましいセンターは少なくありません。

 SVは、そのセンターの理想のコールを実現する担い手です。オペレータの指導内容を決定する際には、センターのミッションや存在意義から落とし込む必要があります。

 また、オペレータは将来のリーダー候補、SV候補でもあります。オペレータ指導をモニタリング・フィードバックに特化せずに、たとえば、「獲得率(またはCS)をあげるために思いつくことを何でもしていい、と言われたら、どんなことをしたいですか?」といった課題を与えることも有効です。目先の応対やモニタリング評価にしか目を向けられていないオペレータに「視点を変えて柔軟に考える機会」を与えることは、将来管理者として活躍する布石になるだけではなく、応対品質の飛躍的な向上にもつながることも少なくありません。

■どの層にどれだけ時間を割くか

 最後に、SVはどういったオペレータの育成にどれだけ時間を割くべきか、ということについて考えてみたいと思います。

 一般的に、オペレータは5階層のレベルに分類できます(図2)。SVが頭を抱えてしまうオペレータ(D層)は、自身の課題には向き合わず、センター側に問題があると考えている、あるいは指示しても改善する気がない(ように思われる)。底上げを考えたとき、管理者はこうしたオペレータに目が向いてしまいがちですが、変化が期待しづらいD層への働きかけよりも、成長の可能性が大きく、他のオペレータに対しても良い影響を及ぼすC層への指導こそが、底上げにつながります。

図2 伸びしろの大きな層にフォーカスして指導する


 なぜなら、成長する事に対して「心のシャッター」を締めてしまっている人、自身を客観的に見ることができず「自分はできている。会社が評価してくれない」と感じている人には、こちらがいくら体力と時間をかけて教育しても心には響きづらいのです。改善の可能性はもちろんゼロではないのですが、変化のために時間と労力を割かなければならず、大きな負担となります。どのセンターでも5~7%程度は存在するこうした層に対して、大切なリソースであるSVの気持ち的・時間的なパワーを注ぐのは、センター全体としてみればいかにも「もったいない」ことです。図2のC層は、適切な教育・指導を受ければスキルアップが見込めますし、人数が多い分だけ全体的な底上げ効果が大きいのです。

 SVは、自分の労力や時間はセンターの貴重な財産であると捉えるべきです。その時間をいかにマネージするかも、SVの重要な役割なのではないでしょうか。

(コンピューターテレフォニー2012年5月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時01分 更新

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