~SVの自分磨き~ロジカルで行こう!第3回



「事実の分析」と「正しい推論」
課題抽出の2大ポイント


問題解決の第一歩は、問題と課題の整理にある。問題はあくまでも「あるべき姿とのギャップ」であり、それがイコール、解決すべき「課題」とは限らない。何が課題かを見極めることは、とるべき対策の明確化につながる。今回は、課題抽出の際に注意すべきポイント――理想と現実の正確な比較、定量/定性情報の使い分け、「事実」と「推論」の切り分け、など――について解説する。

著者:Y'sラーニング 浮島由美子
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 今回は、「課題設定」について解説します。

 「課題設定」とは、正しいルートの“見極め”です。前回の「問題解決ロードマップ」でも、見極めの重要性について触れました。また、「問題点」とは「あるべき姿とのギャップ」であると説明しました。

 「問題の課題化」は、問題解決の第一歩です。必要のない「原因究明」で悩むのは時間の無駄です。私たちは「問題」を感知すると「対策」を考える癖がついています。これを「対策ジャンプ」と呼びます。しかし、「対策にジャンプすること」は「問題解決」のための近道とは限らないということです。良い原因究明の元、良い対策を策定しても、実行時には障害が山積みではむなしいばかりです。

 つまり、最適のルートを最適の方法で進むことこそが、問題の課題化です。

■「問題」とは「理想とのギャップ」

 「問題」の特定をもう少し掘り下げてみましょう。

 問題とは、「気になること」「現に問題が発生していること」「困っていること」「何とかしなければならないこと」「放っておけないこと」「対応が必要なこと」と考えてみましょう(図1)。

図1 問題と課題の違い


 さらに掘り下げると、「問題」とは「あるべき姿とのギャップ」です。良しと思っている状態と何らかの差異があるからこそ、「気になる」のです。うまくいきすぎても「ギャップ」ですので、忘れないでください。悪いことだけが分析対象ではないこということです。

 ここで考えなくてはいけないことは、

・「あるべき姿」はあるのか、皆が知っているのか
・ギャップとは何か、どのように測るのか
ということです。

 もし、「気になっていること」が「昼時間の応答率が上がらずに顧客満足度調査でいつも指摘されていること」であれば、話は簡単です。あるべき姿は「昼時間に待たせると感じさせない応答率を常に確保していること」です。おそらく○%という数値も設定できるでしょう。ギャップは現状との差ですから、現在の応答率を調べればすぐにどれだけ未達成かもわかります。すぐにでも「原因究明」を開始してよさそうです。

 では、「気になっていること」が「モニタリングを長期間実施しているがスコアに進展がみられない」ことだったときはどう考えますか。あるべき姿を明文化できますか。

 「気になっていること」が「対応スキルのばらつき」である場合はどうでしょう。あるべき姿は定義できていますか。現状はどのように把握しますか。例えば、「○○の製品知識があること」がスキル要件の一つであったとき、どのくらい知識を持っているかをどのように把握していますか。

■「勘」を「形式知」に転換する


 「問題」の正しい認識に重要なポイントに「情報の見える化」があります。研修でスーパーバイザーの皆さんのお話をお伺いしていると、それぞれいろいろな部分で「問題を認識」しています。そこには、組織で正しく活動しているリーダーとしての「勘」が含まれます。多くの場合、その「勘」は正しいのです。なぜなら、「勘」とは「知識と経験」によってもたらされるものだからです。

 しかし、「勘」のままでは、ロジカルな問題解決に近づくことはできません。「勘」とは、いわば「暗黙知」です。頭の中にあるノウハウです。この「勘」を「数値化」あるいは「明文化」して「形式知」にすることが「見える化」です。情報は「見える形式」で共有されなくては、組織の知恵になりません。

■定量/定性情報を使い分ける

 先の例の「応答率」は定量情報です。数値化された情報という意味です。数字になっているからこそ、目標値も共有しやすく、現状把握も容易です。「スキルのばらつき」の把握が難しいのは、全てを「定量情報」にすることができないからです。数値化できない文字情報は定性情報です。定性情報はきちんと定義し、もれなく共有しておく必要があります。

 定量化できれば何もかもうまくいくというものではありません。ときに数値は私たちをミスリードします。コンタクトセンターには、多すぎるほどの数値情報が存在します。現状把握に必要な数値を見極めることも重要です。

 定性情報もいつも“やっかいなもの”というわけではありません。数字では説明しきれない部分は文字情報の出番です。両者を使いこなして、わかりやすい「あるべき姿」、正しい「現状把握」をしてください。

 また、「感情論」はロジカルシンキングの担当範囲外と思われがちですが、そのようなことはありません。「感情」は排除せずに、その「感情の根拠」を分析しましょう。「気持ち」の問題を適切に客観視できるかどうかも、ロジカルシンキングだということです。(図2)

図2 定量情報と定性情報を使いこなす

 問題が正しく把握できてこその「課題設定」です。そのため、ロジカルシンキングでは「事実」と「推論」の切り分けが大切です。根拠の説明できない「推論」のままでは、ロードマップは進みません。根拠に基づく事実情報の分析と正しい推論が問題の課題化の重要ポイントなのです。


(コンピューターテレフォニー2012年6月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時08分 更新

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