クレーム対応のレシピ 第2回

皮肉・嫌味・反語に気づかない
「KY=感情が読めない」応対に要注意


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 ため息が出るほどすばらしい(?)クレーム応対の音源を聴いた。ある商品のスペックに関する問い合わせの応対だ。

 顧客「お店に聞いてもわからないと言うし、ここで聞いてもわからない。これじゃ、カスタマーセンターの意味がない」。オペレータ「はい」。顧客「何のために窓口があるの?」オペレータ「はい」。顧客「そんな体制でいつもいるわけ?」オペ「はい。そうですね」。顧客「まぁ、こんなことを大問題にすることではないのでしょう」。オペレータ「ありがとうございます」(「問題にしない」と言われたと勘違いしている)。顧客「すばらしい、わかりました」。オペレータ「はい。今後ともよろしくお願いします」。この後、どうなったかは想像に任せるとしよう。

 クレーム応対で大切なことのひとつに、顧客への共感がある。オペレータがクレームの理由や背景に共感することで、顧客との間に人間関係を構築でき、スムーズに会話を運びやすくなる。

 クレーム応対は、顧客の言葉から感情や真意を汲み取れなければ始まらないのだが、残念ながらここでつまずくオペレータは多い。いわゆる“KY”だ。一般的にKYとは「空気が読めない」ことだが、クレーム対応の場合は「感情が読めない」だ。これは当人の感受性の問題といわれがちだが、もっと原始的な日本語のリテラシーの問題だと思う。

 これについて、2点指摘したい。1つは、言葉は辞書にある意味通りに常に使われているものではないということだ。文脈・状況によっては反対の意味に使われることも少なくない。皮肉・嫌味・反語がそうだ。先の、「こんなことを大問題にすることではないでしょう」という顧客の言葉は、「なんと問題意識のない会社だ」という非難だ。誰にでもわかることのようで、いざ着台して電話を受けるとなるときっと頭が真っ白になるのだろうか、先のようなチグハグな応対が生まれる。

 もう1つは、顧客が事実を訴える時は、その事実の後ろに感情があり、その感情の端々は言葉にならないということだ。図のように、「カメラが壊れた」という事実から「どうしてくれる」というクレームに発展するには、間に「高額な商品なので随分迷って買ったのに、何ですぐに壊れるのか」という感情が存在する。クレームというボールを投げる時、テコになるのが感情なのだ。

 クレームを受けたら、その対処を述べるよりも前に、感情へのフィードバックを行うべきだ。転んでひざをすりむいた幼児に母親がかけるべき言葉は「赤チンを塗るからね」ではなく、「痛かったのね」である。それと同じことだ。

 さて、冒頭の「すばらしい」。その真意は?これは言わずもがなでしたか。

図 事実よりも感情がクレームを生む


(コンピューターテレフォニー2011年5月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時44分 更新

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