クレーム対応のレシピ 第1回

“心×言葉×サウンド”――
「電話で伝える謝罪」の極意

著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 私が関わるコールセンターのオペレーターに、謝罪口上の名人(?)がいる。「申し訳ございません」と謝罪の言葉と共に、30度の敬礼、そして敬礼したまま頭を左右に3回“カッカッカ”と小刻みに振る(なぜかいつでも3回だ)。そして目を見開く。強い目力に、思わず「海老蔵か! 」と突っ込みを入れたくなる。よく言えば“表現力豊か”なのだろうが、どうも“嘘くささ”を感じる。まるで芝居の謝罪シーンのようなのだ。

 これとは反対に、印象に残らない謝罪がある。「担当者から謝罪の言葉もない!」と顧客から怒りの電話をもらい、担当者に謝ったかどうか確認すると「確かに謝った」という返答。音源を聞いてみると実際「申し訳ございません」と一応言ってはいる。しかし、顧客の記憶にはない。“あいづち代わりに謝った”という印象で気持ちが伝わっていないのだ。

 大仰に謝りさえすれば顧客の心に届くのかというとそうではないが、本当に申し訳なく思っていなければ謝罪の言葉は響かない。申し訳なく思う気持ちさえあれば、言葉が自然に届くのかというとこれもそうではない。気持ちを言葉に置き換える表現力がなければ顧客には伝わらない。

 クレーム応対における謝罪の言葉は、気持ちをしっかりと顧客に伝えなければならない。「伝える」とは、心×言葉×サウンドである。この場合のサウンドとは、「言い方」を指す。つまり、何を言ったかという文字に置き換えられる情報だけではなく、“どのように”言ったかというサウンドが問題になるのだ。言い換えれば、心から思うことを適切な言葉に置き換え、さらに気持ちが伝わるような表現が必要だということだ。

 言葉を心と一致させるのが、表現力だ。真心さえあれば言葉にしなくとも、あるいは表現が拙くてもきっと相手に伝わるはずだというならコミュニケーションに関してあまりにも自然主義的であろう。表現力は、表現しようとする意識と訓練(練習)で磨かれる。

 例えば、電話での第一声の謝罪の場合では、息を吸って一瞬止まる(息を飲む感じ)→息と言葉が同時に出て「も~しわけございません(間)という流れになる。(間)とは、頭を下げている時間だ。思いもかけなかったクレームに困惑しているという声の表情もあるといい。

 顧客を思う心と「申し訳ございません」の言葉、そして、サウンドがぴったりと一致するイメージを描いて声に出すのだ。これを念頭に置いて、息を止めて申し訳なさそうな顔をして、「も~しわけございません」を練習してみよう。あ、くれぐれも海老蔵さんにならないように要注意を!!


(コンピューターテレフォニー2011年4月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時43分 更新

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