クレーム対応のテクニック“比較優位話法”

クレーム対応のレシピ 第46 回

「意味がわからない」と言われない技術
“比較優位話法”を身につけよう

 「言語明瞭、意味不明瞭」と言われたのは、タレ
ントのDAIGOのおじいちゃん、竹下 登氏だ。私
が子供の頃の総理大臣である(誰かツッコミ入れ
て!)。世の中の批判をのらりくらりとかわしなが
ら、消費税を導入してしまった。
 さて、政治家におけるのらりくらりはともかく、オ
ペレータの対応が“何を言っているのかわからぬ
意味不明瞭”ではクレームは解決できない。お客
様に誤解させず、わかりやすく話すことは必須条
件だ。わかりやすい話し方というと、発音・話す速
度・平易な言葉などが挙げられがちだが、それ以
上の第一条件は「論理的に話すこと」である。
 “論理的に話す”というと、難しい・理屈っぽい
と誤解される傾向があるが、そうではない。論理
は意味を難解にするものではなく、意味を明快に
するためのものである。論理とは、筋道、つながり
である。人が人の話を「わからない」と思うのは、
単語の意味がわからないのではなく、つながりが
わからないことに多くは起因する。
 論理とは何かについて、これ以上深く言及する
ことはこのコラムの主旨ではないし、「事実? 論
拠? 主張」の構成の話は以前にも書いたので、こ
こは論旨明快のテクニックをひとつだけ紹介した
い。名づけて「比較優位話法」である(ちょっと硬
いネーミングか)。
 基本公式は、「Aは~ですが、(それに対して)B
は~です。(だから)~」だ。いわゆる相対化である。
釣った魚の大きさを示す写真に魚の横に煙草の箱
を置くようなものだ。それに対して「絶対」は比べ
るものがない状態である。
 お客様のクレーム(要求)を公式のAに置いて、
B にはこちらが通したい対案や、Aではない状態
を置く。「ごもっともですが、○○にしますと××
になりますが、△△だと□□です。ですから~に」
「申し訳ありませんが、○○は××ですが、○○を
しないと□□になります。ですから~」。このように
表現すると「それは致しておりませんので」や「~
しかできません」と絶対的な表現で伝えるよりも、
言い方もやわらかく、論旨が明快となり、顧客も納
得感を得やすい。
 A、Bには対照的なもの、あるいは近似している
が差異のあるものを入れ、ひとつの価値基準を元
に結論を導く。AとB の差異がありすぎたり、概
念が違い過ぎると「比べものにならない」ことにな
る。「お車では到着時間がわからないことがありま
すが、(それに対して)電車は正確です。ですから、
(到着時間を確かにするには)電車でお願いできま
すでしょうか」という具合だ。
 では、練習問題。Aに上戸 彩、Bに玉本美砂子
で文を作りましょう。
 比較対象にはならないって? 比較基準を「あつ
かましさ」にでもしておけば成立するはずだ。


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著者:玉本美砂子
テレマーケティングアウトソーサー、JBMコンサルタントの代表取締役社長。日本電信電話ユーザー協会講師で、同協
会主催の電話対応コンクール全国大会の審査員。著書に「クレーム応対の基本(ぱる出版)」「クレーム応対 聞く技術、
断る技術(ぱる出版)」がある。


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2024年01月31日 18時11分 公開

2015年03月02日 14時38分 更新

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